「婚前旅行は朝鮮ですA」 無駄に長いうえ、無駄にイチャつき過ぎ。 清正×小西+α |
翌朝、家人に暇の旨を告げると、人の良い主は朝餉代わりの弁当を用意してくれた。 オヤジ「ほんに、こげなもんで良かかい?」 麦飯の握りをいくつか包みながら心配そうに尋ねられ、小西は何度か頷く。 小「構わへんし。ってか、寧ろこんなんしてもろぅて、おおきに」 ここから、清正の城下までは然程遠くない。清正も、愛馬への行き届いた世話に恐縮しながら、感謝を込めて相槌を打った。 清「すまん、世話になった。時期になったら、また寄らせてもらおう」 小「ほなな、おっちゃん」 オヤジに別れを告げて、暫く馬を進めていると、小西が左前方を指差した。 小「せや、こっちに眺めのエエ丘があんねん。そこで飯にしよか」 清「お前の寄り道場所のひとつか…」 小「なんでそう、俺がいつもフラフラしてるみたいな言い方やねん」 清「いつもフラフラしてるだろう?」 小「見回りしてるんや!」 清「そう言うと、聞えが良いな」 小「そりゃ、ちょいちょいウロウロしとる時もあるけど…」 清「それで迷子になる事もしばしばといったところか(笑)」 小「そうそう。海側で良かったわ。山やったら大変やった」 清「まるで、迷い込んだ事がある口振りだな」 小「あー…」 …うっかり迷って、それでもどうにかお前の所に辿り着いたものの、余りの衣服の汚れっぷりに自分をよく知る使用人に風呂場へ連行され、湯上がりに借りた着物に袖を通してたら、帰ってきたお前が目の色変えて飛び付いて来た時や。 ――とは言えないので、小西は可愛らしく小首を傾げると、 小「どうやったかなぁ??さぁ、着いたで。馬虎、ここらで止まりぃな。お弁当やで」 小西の声に合わせて、馬虎が静かに歩みを止める。 清「確かに見晴らしの良い場所だな」 馬を降りると、やはり無意識に小西に手を差し出す。それに対し、やはり無意識に清正の手を取って馬を降りる。 無意識なので、治りません(笑) 小「せやろ。お気に入りの場所や」 清正が馬を繋いでいる間に、小西は指定席のように、大きな木の元に座った。 繋ぎ終えて後を追うと、小西が濡れた手拭いを差し出す。 小「おっちゃん。用意ええわ〜」 清「…そうだな」 手拭いは綺麗好き清正の為に実は小西が用意したものなのだが、自分が用意したのだと悟られたくない小西は、わざと口に出して言う。 清「(この手拭いの畳み方、どう見てもお前の癖なのにな)優しいな」 小「せやなぁ。ほな、頂きます」 気付かれてるとも知らず、嬉しそうに握り飯を頬張る小西。 笑いを噛み締め、清正も一つ手に取る。 小「ホンマ、旨いなぁ。城主がエエ男やから、米も上等なんやろな。うん」 清「なるほど。では、その城主がメロメロになってる隣の城主は、もっとイイ男なわけだ。そうか。道理で城の飯が旨いわけだ」 小「何でやねん!(裏ツッコミ)知っとった?俺、結構ゲテモノ好きやねん」 清「相変わらず、素直じゃないな」 小「どっから出とんの、その自信」 清「口の減らない奴だな。昨夜のしおらしさは何処に行った」 小「…夢でも見たんやろ。も〜やめや。折角見晴らし良くって、美味いもん食ってるんや。言い合っとっても埒あかんわ」 真っ赤になって巻くしたてる小西に、笑いがこみあげるが、ここで笑っては小西の機嫌が急降下するのは間違いないので、口端にのみに留める。 清「そうだな」 小「天気エエなぁ…」 清「ここで昼寝でもしたいな」 小「せやなぁ。暢気に何も考えんと、仲良しこよしで転がりたいなぁ」 清「ふっ…そうだな…」 穏やかな日差しの下で草を食む馬虎を眺め、小西が擽ったそうに笑う――触れたい、と清正が思うよりも、身体は正直だった。 小「?…―っ」 頬に添えた手のひらはそのままに、触れるだけの細やかな口付けを交わす。 惚けたように見返す小西に気付き、清正が苦笑を浮かべ立ち上がった。 清「行くか」 小「(虎って何気に接吻好きやな…まあ、俺も人の事言えへんけど)」 清「置いて行くぞ」 小「ちょ、待ちいな!」 慌てて立ち上がり、清正に駆け寄る。 それからは特に会話も無く馬を進める。 でも、居心地の悪いものではなく、寧ろそれがとても自然なもののようで、小西は背後の清正の穏やかさが心地好く、清正は目の前で揺れる小西の髪を眺めていた。 清「…寝てるのか?」 城下に差し掛かる頃、おとなしく背を預ける小西に、清正が小さく問う。 小「あ…重かったん?」 堪忍な、と軽く振り返り答えるのに清正は首を振ると、 清「疲れているなら、休もうかと思っただけだ」 気遣う言葉に、小西が肩を揺らした。 小「あと少しやん。ほら、もう町が見える。休憩は、いくらだって出来るやん」 城下まで着いた頃、小西は後悔の念に捕われていた。 小「(うっかりしとったわ…せめて馬降りときゃよかった…)」 城下町ともなれば、清正の顔も皆知ってる訳で、しかも、何故か自分もバレていて、尚且つ、今回清正が外出した理由まで皆知っているらしく、通り掛る人、皆口を揃えて「仲直りしたんですね〜」と声を掛けられた。 小西は顔から火が噴き出しそうな勢いだったが、清正は至って普通で、やはり清正の神経を疑ってしまう小西であった(笑) 小「なぁ、虎」 清「なんだ?」 小「あー…もうちょい、駆け足にならへん…?」 道行く市井の人々から掛けられる暖かい眼差しに、小西がとうとう音を上げる。 さすがに喧嘩の理由は知らなくても、迎えに行ったとか、仲直りなどという言葉を耳にすれば、第三者から見てもどれだけ自分達が普段一緒にいるのか分かると言うもの。 小「(…まさかと思うけど、俺達の関係、バレてたりしてへんよな…?)」 いや大丈夫大丈夫、と心の中で繰り返しながらも、つい馬虎の首に縋りつく。 清「気分でも悪いか?」 小「気分が悪いんやのうて、気落ち?」 清「疑問系か」 小「あのさ。一応確認の為聞くんやけど…皆俺達の関係知らへんよな?」 清「ああ、その事か…何故か知っておるみたいだ」 小「はあ!?ななななんで!?」 清「出処はよく知らぬが、噂話好きな女共が、発端のようだ」 小「あ゛?」 清「以前の俺達があまりにも仲が悪かったのが原因らしい」 小「それがなんで?」 清「『喧嘩する程仲が良い』や『嫌い嫌いも好きのうち』って事らしい」 小「意味解らんわ!」 清「俺の知らぬ所でなされた噂だ。気がついたら、皆がそれを信じていたし、計らずしも噂通りになってしまったからな(苦笑)」 小「なんやねん。この国」 清「まあ、非難されるよりはマシだろう?」 小「この歓迎、祝福状態も、ある意味嫌やわ〜」 なんてこと!腐女子の噂話が国全体に(笑) 全く以て、ぐったりと表現するべきだろう。 「もぉ、イヤやー」と泣きが入り始めた小西の頭を撫で、清正が軽く馬虎の腹を蹴る。 清「(ヤリ過ぎたか…)」 苦笑混じりに手綱を操り、清正は人々が慌てて道を譲るのを見遣った。 清「直ぐに着く。落ちるなよ」 小「落ちひんようにお前が気ぃつけや!ここで落ちたら、余計に恥曝しや!」 清「余り喋るな。舌を咬むぞ」 小「咬まへんわ!いっ!!」 清「…お約束なヤツだな」 小「!!」 清「そう怒るな。ほら、着いたぞ」 門番達が揃って「おかえりなさいませ」と言うのに清正は頷いてみせる。そして次に門番達が「おかえりなさいませ、小西様」と言うのに小西は困惑する。 清「どうした?」 小「何かオカシイやろ?」 今更、「いらっしゃいませ」もないなとはおもうが、「おかえりなさいませ」? いやいや、ちゃうやろ。と唸る小西を苦笑混じりで眺める。 清「まあ、細かい事は気にするな」 そのまま城門をくぐり厩へと近付くと、清正の家臣達が現れる。 そして、家臣達の「仲直りされたようで、良かったですねぇ」の言葉に小西は城下での事を思い出し、再び焦り始めた。 清正が馬から降りるのを見計らうと、小西は即刻馬から飛び降り、脱兎の如く走り出そうとして、清正に捕まった。 清「どうした」 小「あああ、さっきの砂埃で、いや〜な感じがすんねん!ふふ風呂借りるわ!」 小西は清正の腕を振りほどくと、今度こそ脱兎の如く走り出した。 家臣「…小西様はどうされたのですか?」 家臣達の不思議そうな表情に苦笑をもらすと、 清「ああ、ちょっとな」 勝手知ったる何とやらで、走り去る小西を清正が見送った頃。当の小西は、これ以上家人に会わないようひたすら祈りながら、宣言通り湯殿を目指していた。 小「あかん!これ以上あいつと一緒におったら、絶対あかん!」 うっかりイチャイチャした日には、赤飯が振る舞われるに違いない! 小「ついでに泊りでもした日には、朱塗りの器にお頭付きの鯛が出てくるんや!」 想像した食事や食器が、やたらと鮮明な事に小西は気付いていない――今までに何度か同じ状況下で口にしているに拘らずだ。 最後の角を曲がり、湯殿番に声を掛ける。 湯殿番「お帰りなさいませ、小西様。…お一人ですか?」 小「!?(ここもかいな!ってか、風呂は一人用やろが!)〜〜っ!暫らく使わせて貰うよって、よろしゅう!」 ぐいぐいと番人を押し退けて、小西は戸に簡易の閂をかけた。 勝手知ったる何とやらで、走り去る小西を見送ると、清正は家臣の一人に声を掛けた。 清「厨に梨がある。すまぬが、二つ三つを井戸まで持って寄越してくれ」 厩番「井戸に、ですか?」 清「あぁ。身体を洗う序でに、冷やしておこうと思ってな。すまぬが、頼まれてくれ」 厩番「はい。ですが、井戸でお体など…」 案じる厩番に、清正は口端を緩ませた。 清「おかしいか?何。すぐに暖まる」 厩番「!!あは、そうですよね!いらぬ心配とは正にこの事でした!」 何かを多分、とっても大きく勘違いしている厩番。 小西は沈んでいた。気持ち的にも湯の中にも。 小「ぷはっ!あかん。これ以上入っとったら、のぼせるわ」 とりあえず湯船から出るが、どうにも戸を開けれない。 確かに清正の事は好きになってしまったし、そんな関係にもなってしまった。嘘から出た真とでも言うか、噂も間違ってない。 でも、こんな風に皆に知られたかった訳ではない。何しろキリスト教では衆道はご法度だ。だけど、教えを捨てれる訳でもなく、ましてや想いも捨てられない。なんと欲張りで罪深いんだろう。 小「はぁ。どないしよ」 梨を受け取り、桶に汲んだ水に浸した後、水を被り体を簡易的に清める。夏の残暑といえども、流石に冷たい。家臣から手拭いを貰い吹き終えると、着物を身に着ける。 暫くしても小西が現れない事に、清正も湯殿へ向かう。入り口で番人が困り顔で立っていた。 湯殿番「殿!小西様が出てこられないのです…」 清「仕方がない奴だな。ここはいい、俺が待つ」 湯殿番「えっ?あ、はい」 立ち去るのを見送ると、壁にもたれる。 彌九郎にはこの現状、厳しかったか。 小西の心情を計る。 一人になった今、いろんな事が渦巻いているだろう。 根も歯もない話なら、止めるが、真実となってしまった今、隠しておけるものではない。自分がふれまわった訳ではないが、周りが気付くのは時間の問題で、この状況、城の者なら解ってしまう訳だ。 清「…彌九郎、いつまで入ってる気だ」 小「…なんや。待ち伏せか」 声が近い。小西が戸の近くに居るのが解る。 清「湯冷めして風邪をひいても知らんぞ」 小「今出るとこや!」 言葉の威勢とは逆に、そろそろと戸が開いた。 小西「…虎」 一寸程の隙間から覗く瞳が、真っすぐに清正を捕らえる。 小「…俺な、今、目茶苦茶恥ずかしいねん…」 清「あぁ」 小「そんでな、別の部分でも思うトコロもあって…その、な?その…つまりやな」 しどろもどろになる小西に、清正が壁に背を預けたまま囁いた。 清「…裏手に抜け道がある。城から出たら、すぐ壕に入れ。進めば、そのまま最寄りの寺に通じている。後で脚の良い馬を寄越そう。それで戻れ…国に」 小「国…??…って、はぁ!?」 壊れるかと思う勢いで扉が開き、襟首を小西に取られる。 小「もっぺん言ぅてみぃ、虎!」 ぐい、と顔を近付け睨まれて、清正は困惑気味に口を開く。 清「帰りたいんじゃないのか?ここの者は皆、俺を含めお前の存在を歓迎しているが、お前の心中、そうもいかぬだろう?」 小「〜〜!!早合点すな!このアホ虎!」 羞恥とも、風呂上がりとも取れる朱色の頬に怒りを加え、小西が詰め寄る。 小「俺は、恥ずかしいて言ぅてんねん!帰るとは言ぅてへん!」 清「だが、常に人の目があるぞ?」 小「そんなもん、俺のトコかて一緒や!奥州辺りまで行かな、変わらへん!」 掴んだ襟首を、小西が更に引き寄せる。 そして交わされる、本日二度目の、触れるだけの口付け。 清「―――」 小「…変わらへんから、ここに居たるわ」 しょうがない、と呟いて、小西が清正の胸に顔を埋める。 まるで嵐だ。 呆気に取られつつ、清正は小西の髪にそっと触れた。 清「濡れたままだぞ」 小「…そんなん、いつもみたいに、お前が乾かせばえぇやん」 清「いつもみたいに、か」 苦笑が浮かぶ。 井戸水で冷えた手が首筋に触れぬよう、清正は気遣いながら小西の髪を手拭いで被った。 一方その様子を見守る者が!! 清正に言われ立ち去ったはずの湯殿番は、気になって物陰から様子を見る。清正が壁にもたれているのが見える。微かだが話声が聞こえると、ずっと篭っていた小西が姿を表した。 湯殿番「(小西様湯あたりとか大丈夫かな?…えっ?殿なんで裏道?)」 厩番「なにしてんの?」 湯殿番「うわってか、し〜」 突然後ろから掛けられた声に大声を出しそうになるのを堪え、小声で厩番に説明する。 湯殿番「…で、何か小西様帰るらしい」 厩番「えっ?さっき来たばっか…」 そこで小西の声が響く。 小西「もっぺん言ぅてみぃ、虎!」 湯殿番&厩番「(ええ!?喧嘩!?)」 女房「何してるの?」 湯殿番&厩番「(いひゃ〜!)しぃ〜」 女房「静かに??え?殿と小西様?やだ、喧嘩?」 家老「ふむ…泣きそうですな…」 湯殿番&厩番&女房「(!?)」 厨番「ほう、珍しい。殿が困ってますね」 小姓「あ、小西様から…」 いつの間にか集まったデバガメ達。 全員「(やっぱ今日の夕食は赤飯だ)」 厨番「腕がなりますねぇ」 小姓「今日は布団、一組でよろしいですよね」 家老「そうですな」 女房「羨ましいわぁ」 厩番「うんうん」 湯殿番「もぉ〜小西様可愛すぎ!」 筆係「何してるのぉ?」 全員「(お前遅すぎ!)」 筆係「えっ?何?」 小姓「皆さん、殿が此方に来られます!」 湯殿番「隠れないと!」 全員近くの部屋に入る。清正と小西が通り過ぎると、全員が安堵の溜め息を吐いた。そこに、 清正「そこに居る奴、全員二刻正座、反省文提出だ」 全員「バレてた!」 廊下に正座する集団が見られた。一人関係無い筆係まで巻き込まれて…。 反省文を書きながらも全員反省などしていなかった。 妄想だけが大きく広がっただけだった。 小西達に話を戻して。 ぼんやりと中庭を眺めていた小西の耳に、急いた足音が聞こえた。 小「用事、終わったん?」 清「まずはな」 手桶を片手に姿を見せた清正は、心なしか呆れ顔だ。 小「家のモンに、何かあったんか?」 小首を傾げると、清正の大きな手の平が小西の髪に触れた。 清「…善処はするが、至らなかったらすまん」 小「はぁ?意味からん。まぁ、えぇけど」 その頃正座組。 筆係「だから、一体何があったん・で・す・か!?」 家老「いやいや、某からは」 小姓「差しでがましい事は言えません」 女房「私の口からはとても」 湯殿番「仲良き事は美しきかなって感じ?」 厨番「もう、今日は赤飯って連絡しておきました!」 厩番「っちゅう訳だ!後は想像しろ」 筆係「何と無く解るような解らないような。ってか、何で私まで正座させられて、何にもしてないのに、反省文など」 筆係が左の家老の反省文を覗き込む。 家老反省文 【〜略〜やはり、あのような場合は小西様をそっと抱き締めるべきだと思います】 筆係「(反省文じゃないし!)」 右側の厩番の反省文を覗き込む。 厩番反省文 【〜略〜その時、行長の耳元に囁く。擽ったそうに笑う姿に、清正も笑む】 筆係「(話書いてるよ!しかも、殿と小西様の恋愛小説!?これ提出する気!?)」 その時、厩番の右側に座る湯殿番が厩番の文を覗きこみ、 湯殿番「凄いな。お前にそんな才能あったなんて」 厩番「いや〜日々の妄想の賜だよ」 筆係「………そういう問題か?」 筆係には周りの皆が輝いて見え羨ましくなった。 筆係「私も早く来ていれば、皆さんのように楽しめたンでしょうね…(遠い目)」 小姓「落ち込まないでください。また機会はありますよ!」 女房「殿の部屋を張ってれば大丈夫よ」 微妙な励ましを受けつつ、筆係は涙を堪え、意味のない反省文をかきはじめた。 ――そして奥座敷では。 濡れたままの髪をいじる清正の手を掴み、 小西「さっきからワサワサと。何がしたいねん、お前は?」 ちょこん、と清正の前に座り直した小西が、乾いた手拭いを手繰り寄せて軽く仰のく。 小「ん。ほら、はよせい」 目を閉じて自分を待つ姿に、清正の心が疼いた。 清「(あいつらは反省中だし、念の為人払いもしたしな)」 うむ、と心中で頷き、髪を乾かす手を止める。 小「ん?なんや?」 片目を開けた小西に、清正がそっと顔を近づける。 小「ああっ!だから!何でお前は、いっつも突然やねん!」 清「目の前にあれば、気になるものだろう?」 小「ならんでえぇ!」 さっきは自分からしたくせに、とは言わない清正だが、それも思惑の一つ。 清「そうか…」 少し残念そうに頷いて、黙々と小西の髪を拭き始める。 小「…なんや。やらへんのん?」 清「お前が嫌がる事は、したくないしな」 物分かりの良い笑みを浮かべつつ、清正の手は止まらない。 小「ふぅん…」 何か、ほんの少し考える仕草を見せた小西が、小さく呟く。 小「まぁ…目の前に、こないなエェ男が目ぇ瞑ってたら、しゃぁないな」 清「仕方ないか」 小「そうそう。しゃぁない」 清「そうだな」 二人で少し笑うと、清正は髪を拭いていた手を止め、そのまま両頬を包み込む。 目線を合わせたままだった小西の瞳に恥ずかしさの色が混じると、照れ臭そうに笑い瞳を閉じ、清正は閉じられた瞳に口付けを落とす。 震える睫を見ると、 清「目を開けろ」 ゆっくりと開かれる瞳 清「目を開けておけ。彌九郎の目が見たい」 小「もぅ。恥ずかしいなぁ…」 そしてついばむように口付けを繰り返すと、薄く開かれた唇をおしあけ、深く合わせる。 次第に小西の腕が清正の首に回るのに、小西の腰に手を回し、引き寄せ膝に座らせた。 小「…ぁ、っ」 清正の指が、小西の背骨を一つ一つ確認するように辿る。 堪らず清正の唇を噛みそうになり、小西が甘噛みのまま息を詰めた。 衣擦れの音が、大きく響く。 もう一度、と言うように、小西が全身で清正を引き寄せた――その時。 小「冷た…っ」 爪先で蹴りつけた桶に驚き、我に返ったように身を起こす。 小「…忘れとったわ」 清「いつでも食える」 小西を膝に抱え直し、清正が子供のように額をくっつける。 小「なんや、えらい図体のでかいガキやなぁ」 清「何とでも。また冷やせばいい」 小「我儘。せやけど、あれは虎が冷やしてくれたヤツやもん」 やっぱり今食べる。と、腕から抜け出す小西を清正は残念そうに見つめた。 続き…。 戻る 作品倉庫へはブラウザを閉じてください。 |
またも続いちゃった。 ってか、長すぎ。 頑張ってます。 20060919 佐々木健&司岐望 |