加藤君の恋人@ 清正×行長 |
世の中には本当不可思議な事がおきる時がある。 それが、まさか身近に起きるとは誰も思わないことだが。 真夜中、清正の額に何かしらの感触と些細な衝撃がはしる。 「虎!こら、起きろや!虎之助!」 「…一体なんだ…?」 目を開けた清正の目に入ったものは、行長の全身だった。 遠くに居る訳でなく、間近に居るのだが、全身が見える。 小さい? 「虎、俺…」 「俺はまだ寝ているのか?」 「多分起きとる」 「小さくないか?」 「なんや、ちっさくなっとんねん」 清正が手をだし、行長に近付ける。 丁度掌と同じ位、行長が少し大きい感じだ。 「やはり、夢か?」 「夢ちゃうわ!ちっさくなっとんねん!」 怒りも露に、側にかざされた手に抱きつくように、清正の指に噛みついた。 「つっ!………」 噛みつかれて、痛がったものの、今度は固まっている。 「固まんな!」 「…本物の彌九郎か?」 「お前が俺を見間違えるんか?」 すねた様子を見せる行長は、作りは小さくなっているものの、間違いなく行長だった。 認めざるを得ない、小西行長、小人になっている。 「何故小さくなっているのだ?」 「解らん…起きたら、こうなっとった…」 清正が認めると、今度は行長が不安になって、その場に座り込んだ。 そういえば、行長は裸だった夜着は着たはずだったが、小さくなった故脱げたのだろう。 「寒くないか?」 清正の言葉にうつ向いていた行長が顔をあげる。質問の意図が掴めていない様子だ。 「お前裸だろ」 言われて気が付いたのか、一気に真っ赤になる。 何度も互いを確かめ合い、体を知り尽しているというのに、恥ずかしがる行長に、笑っている場合ではないが、笑みが洩れる。 かといって、今の行長に着れるものなどなく、 起き上がった清正は布団の中に残されている夜着を刀で裂いていく。 そうして二枚の布きれにすると、一枚を胴に巻き付け、もう一枚は肩に掛けてやった。 ひとまず落ち着いてみたものの、何故小さくなったのか原因が解らない。 夕方に清正の邸に来た行長は特におかしな点は無かった。 「俺の所に来るまで、何をしていた?」 「虎んとこに来るまで?」 朝起きて、ご飯食べて、出仕して、特に仕事は多くなかったから、早めに出て、紀之介さんに会って、茶屋で団子食って、そんとき酒を貰ったから、此処に来た。 「そんな感じ」 「紀ぃ兄から貰った酒は一緒に飲んだしな…」 おかしな点は無い。 行長の行動におかしな点は見当たらないが、気になる点が一つ。 大谷吉継。 この人物が気になる。気になって仕方ない。 まさか人を小さくする術など使えるとは思ってもないが、なにぶん不可解…不思議な人物である事も…。 「紀ぃ兄に会ったというのが、気になる所なんだが…」 清正の呟きに行長が顔を上げる。 「やっぱ虎もそう思う?」 二人同意見のようだった。 「夜が明けたら行ってみるか」 「せやなぁ。なんや、そう思ったら眠なってきたわ」 寝ると言って行長はコロンと横になった。 この状況下で眠くなれる神経を誉めたい。 潰すなと言うものの、布団に潜ると何処に居るのか分からなくなるので、清正は自分の胸の上に乗せて寝る事にした。 良い寝床を探そうとゴソゴソとしていたが、暫くして行長は丸くなって眠りに入る。 到底眠る事は出来ないと思っていた清正だったが、行長から伝わる温かさに少しずつ眠気がやってきて、意識を眠りにやった。 そうして眠り始めた清正だったが、悪夢を見る事になる。 苦しい!? カッと目を開いた時、夢で見た圧迫感は感覚的に残るものの、何も無い。 夢、か…。 何やら巨大な物に潰される夢だった。 顎を引いて自分の胸の上をみると、夜着が膨らんでいる。捲ってみると、丁度心臓の上で行長が丸くなって眠っていた。 …こちらは現実か…。 どうせなら行長が小さくなった事も夢だったら良かったのだが、どうも逃れられない現実だった。 起きている時はあまり重さを感じなかったが、やはり多少の負荷が掛る為か、潰される夢を見たようだった。 しかし…なんで夜着の中に入ってるんだ? 暫く観察していると、夜着を捲っている為寒くなったのか、行長がゴソゴソ動き始める。 ……擽ったい。 そして行長はゴソゴソと清正の腹の方へと移動する。 「〜〜…」 何ともいいようのない感触に清正は鳥肌がたった。 それは秘密の方向で。 このままもう少し寝かせてやりたいところだが、じき夜が明ける。起こそうと思ったが、考えてみれば、このまま移動すれば良い事で、行長を懐に入れたまま、身を起こす。少々帯の辺りがもたついているが、大丈夫だろう。 まずは顔を洗いに行こうと清正は立ち上がり、襖を開けた。 小姓と会い挨拶をしたその時。 「…なんやぁ、ぐらぐらする」 懐の行長が起きたようだ。清正が焦り、小姓が首を傾げる。 「今、小西様の声が…」 声はするが、姿は無い。 「気のせいだろ…」 行長がまた喋り出しては困る。清正は慌てて厠へ向かう。 清正が立ち去った後も小姓は首を傾げるのであった。 厠へたどり着き、戸を閉めると、懐の行長を出す。先の言葉はどうも寝言だったらしく、 眠っている。掌に乗せた行長の頬を人指し指でつつく。 「おい。起きろ」 「む〜ぅ…うっわ!虎デカっ!」 「騒ぐな。お前が小さいんだ」 清正の言葉で思い出したのか、ポンっと手を打つ。 「せやった。忘れてたわ」 とりあえず急いで支度をし、行長を懐に入れ、吉継の元に向かった。 懐の行長がゴソゴソ動く度に鳥肌をたてる清正であった。 続き。 作品倉庫へはブラウザを閉じてお戻りください。 |
司岐が見た夢を話にしてみようと。 まだ、完結してない上、完結するのかどうかも解らないが、ひとまず見切り発車。 ありきたりな話ですが、やっぱこういう話が好きだったり(笑) 20061205 佐々木健 |