元旦〜西軍〜








小鳥のさえずりに目が覚める。
今日は元日。
新しい年の始まり。
新しい年を迎える事が出来た事。
それがとても嬉しくて、羽織りを着て縁側へと出る。
昨夜から降り始めた雪はもう止んでいたけれど、一面雪景色となっていた。
吐いた息が白くたなびくキリリと冷えた空気を思い切り吸い込んだ。












家臣達との新年の挨拶を済ますと、すぐに来客が知らされる。
こんな早くから誰だろう?と迎えれば、きっちりと紋付き袴を着込んだ三成だった。

「明けましておめでとう。三成」
「おめでとう…その…今年も宜しく頼む」
「此方こそ宜しく」

新年の挨拶は友とするのは、何だか気恥ずかしい。
そんな事を思っていた所に威勢の良い声が響いた。

「たのもー!!」
「幸村!道場破りではないぞ!」

幸村と秀家だ。

しかし、「たのもー!!」は無いだろうと苦笑すると、隣の三成も眉を顰めながらも、少し笑っていた。

「明けましておめでとうございます!吉継殿!」
「明けましておめでとう…三成も居たのか?」

赤い紋付き袴姿の幸村と、煌びやかさに磨きの掛かった秀家。

「明けましておめでとうございます。お二人が揃ってとは珍しいですね」

素直な感想を漏らすと、丁度屋敷の前で会ったらしい。
三人を部屋へ通そうとした所に更に違う人物の声が掛かる。

「お、皆さんお揃いかい?明けましておめでとう」

至って普段と変わらない左近だった。

「明けましておめでとうございます」

そこでふと思う。
何故、私の屋敷に皆集まったのだろう?
何か約束等しただろうか?
記憶を探っても何も思い当たらない。

「吉継?どうかしたのか?」

考え込んだ私に三成が顔を覗き込む。
顔を上げれば皆此方を見ている。
やはり、何か約束していて、私はすっかり忘れてしまっているのだろうか?

「えと…本日は何故私の屋敷に集まられたんでしょう?」

そう言えば、皆一様に首を振った。

「示し合わせて集まった訳ではないぞ」

秀家が言うと、他の三人も頷く。
ますます分からない。
では何故皆集まったのだろう?
三成が口を開く。

「吉継を初詣にさそいに来たんだ」

次に秀家が、

「余の家臣達がかるたを作ったから、やろうと思って来た」

そして幸村が、

「正月なので、羽根突きをしようと勝負を挑みに来ました」

ああ、だから「たのもー!!」だったのか…。
そして最後に左近が酒瓶を持ち上げて笑う。

「目出度い日には宴会だね」
「お前はいつも宴会状態じゃないか」

三成のツッコミに秀家と幸村も頷く。


ああ、そうか。


病を得て、屋敷に閉じこもりがちな私に、皆正月を知らせに来てくれたんだ。
そんな気遣いが申し訳なくて、でも、凄く嬉しい。

ありがとうございます。

言葉に出して言えば、皆否定するだろうから、心の中で感謝を述べる。











それから、初詣かかるたか羽根突きか宴会かで少々揉めたけれど、皆で初詣へ行き、羽根突きをして、かるた取りをやって、宴会へとなだれ込んだ。










明けましておめでとう。
今年も宜しくお願いいたします。 











終わり

これも書いたのは元旦ですww

20100531   佐々木健