大晦日
アバ子と伝令

アバ子:鳴瀬莉瑠  伝令:厚狭夜明
 






「暇〜…」

火鉢の周りをゴロゴロ転がる女が一人。

「なら、働け」

そんな女を溜息吐きながら眺める男。
男の言葉に、ゴロゴロ転がっていた女が起き上がる。
ゴロゴロしていたお陰で、頭はボサボサになっている。
女は此処の領主。鳴瀬莉瑠。
男は莉瑠の主君より遣わされた厚狭夜明。

「仕事しろっていったって、やれる事は全てやっちゃったもん」

お仕えも、大掃除も、新年の準備も。
ぷくっと膨れる莉瑠に、また夜明は溜息を吐く。

「年越し蕎麦は?」

そう言うと、莉瑠の顔が少し強張る。

「?」
「蕎麦は駄目!」
「な、なんで?」

物凄い剣幕の莉瑠に、珍しく夜明が押される形になる。

「だって、私蕎麦アレルギーなんだもん!」

蕁麻疹みたいになるんだよ!とその時を思い出したらしく、あちこち掻き始める莉瑠を手を掴んで止めさせた。

「食ってないんだから、痒がるなよ!」
「う〜…」

ジト目で睨んで来る莉瑠に本日三度目の溜息。

「あ〜だったら、きしめんなんかどうだ?あれも切れ易いし…」
「!!夜明さん頭良い!!」

渋顔から一変、満面の笑顔になった莉瑠に、夜明も釣られて笑う。




それから、年越し蕎麦ならぬ年越しきしめんの準備に取りかかった。








終わり

今更大晦日話?って感じですが、この話を書いたのは本当に大晦日でした。

20100521   佐々木健