小田原の陣
『今夜は眠らせない〜戦場の男達〜』
忠勝←直政&康政→吉継?






秀吉が小田原の北条攻めを行う際、徳川家康の行動が秀吉にとって最大の問題であった。
そこで、家康を此方に付かせる為、大谷吉継に家康との交渉をさせる事にした。






徳川家康との交渉にやってきた吉継、一度敵対し徳川軍の強さは知っている。
普段慌てたりする事が少ない吉継も流石に緊張の色は隠せなかった。

まず通された部屋にて、家康を待つ。

(…流石に緊張するなぁ…)

「失礼します。お待たせしてすみません。殿は……」

部屋に誰かがやってきた事で頭を下げ顔を上げた吉継の顔を見て、入ってきた人物が固まっている。

「あの?」
「あ、ああ!すみません!殿はもうすぐ来ますので!」

不思議そうな顔をする吉継に、固まりが解けた人物が慌てて言葉を続けた。

「はい。ありがとうございます…私、大谷吉継と申します」
「大谷殿ですか、私は榊原康政です」

榊原康政、顔が真っ赤になっていて…どうやら、康政は吉継に一目惚れなご様子です☆

そんな事を知らない吉継は康政の名を聞いて驚いた。
榊原康政といえば、小牧の役の際、秀吉への檄文を触れ出し、その後も寡兵ながらも秀次隊を打ち破った人物。
だが、目の前の人物はとても穏やかそうに見えて、吉継は『人は見掛けによらないな』と思った。

そうしていると、漸く家康が現れる。
顔は合わせた事はあるが、言葉を交すのは初めてで、吉継は家康を覚えているものの、家康は覚えていないであろうと思う吉継は、再び緊張した面持ちで頭を下げた。
そんな吉継の緊張を読みとったのか、家康は顔を綻ばせながら座に着く。

「そんなに緊張なさらず。久しぶりですな。大谷殿」

よもや、自分の事など覚えていないだろうと思っていた吉継は家康の言葉に驚いた。




それから、他愛もない話をし、秀吉からの言葉を伝える。
そこで思案顔の家康を遮り、康政が割って入り、吉継の手を取った。

「手伝います!!」
「小平太!?」

家康と吉継、共に唖然。
そんな二人の事も構わず、康政は未だ吉継の手を握り締めはつらつとした笑顔を見せていた。

「小平太…」

家康は溜め息を吐き、間に康政が居る為見えなくなっている吉継を体をずらし覗き込み、

「徳川は豊臣に付きましょう」

と微笑み掛ける。
気を持ち直した吉継は一先ずこの交渉が成功した事に安堵し、顔に笑みが浮かんだ。

「有難うございます」

花が綻ぶような笑顔の吉継に、康政更に二目惚れ☆









そんなこんなで小田原征伐当日。

康政は吉継に会えるのを楽しみにしてたのに、何処にも吉継の姿は無し。
豊臣側に見知った顔も見付けられず、しょんぼりしてると、忠勝が現れた。

「どうした?」
「あ?ああ…ほら、前話したじゃん」

康政の言葉に最初解らない顔を見せたが、思い付く。

「大谷吉継だったか?」

康政の探し人。
あの時一目惚れした大谷吉継。

「そう。何処にも見当たらないんだよ」

溜め息を吐いてうなだれる康政を一瞥し、忠勝は辺りを見回した。

「…この大軍だからな。易々とは見付けられんだろう」
「はぁ…何処に居るんだろ……なぁ平八、お前何ぶら下げてんの?」

忠勝の後ろに何かぶら下がっている。
忠勝は重い溜め息を一つ付き、

「……万千代」

とだけ答えると、後ろにぶら下がっていた万千代こと井伊直政が忠勝の背中から飛び降り、康政を睨み据えた。

「よっと…もう!折角平八と二人きりだったのに、邪魔しないでよね!」
「え?何にも邪魔なんか…」

っていうか、周りは人だらけで、全くもって二人きりではないんですが…。
直政の剣幕に、少し押され気味な康政。
直政は一つ溜め息を吐くと、不敵な笑みを浮かべた。

「そうだ!良い事教えてあげる…だから、どっか行って」
「おい…」

あんまりな言い方に忠勝が割って入ろうとしるが、直政が手で制し、康政の答えも聞かずに「良い事」を話始める。

「大谷吉継はね。忍城攻めに行ってるよ」
「ええ〜!?」

忍城!? って事は、小田原には居ないって事!
みたいな★

「ちょっ…忍城行ってくる!」
「おい!」

忠勝は康政を止めようとしたが、伸ばした手は空を掴み、物凄い勢いで康政は忍城方面に走って行ってしまいました☆

「平八vvやっと二人きりになれたねvv」
「…二人きりではないが…」

周りは沢山の人が居ますよ。
皆奇異の目で見てますよ。
まあ、直政にとってはどうでも良い事ですが。






そんなこんなで夜。

相変わらずの膠着状態。
いい加減北条側には勝ち目のない戦で降伏してしまえば良いのに、名門と言う事がそれを許さないのか、何も起こらず日が暮れた。




忠勝が見張りの者や周りを見て回り、寝床へと向かうと、そこには直政が座って待っていた。

「平八〜っ、一緒に寝よ☆お布団持ってきた」

直政の言うお布団。
真ん中に金字『井』と書かれた赤い旗差し物(中に綿詰まってます)

以前から大きい差し物だとは思っていたが…。

「そのため!?」

あまり物事に動じない忠勝であったが、流石に驚いた。
ニコニコと笑いながら寝床の準備をする直政に、何とか自分の所に帰そうと忠勝は考える。
考えてる間に寝床の準備を終えた直政は、もそもそと忠勝に近寄り―――

「…今は戦中だ。不謹慎な事は止めろ」
「不謹慎じゃないよ!一緒に寝よって言ってるだけじゃん!」
「じゃあ、この帯に掛っている手はなんだ?」

明らかに脱がせようとしている手を掴むと、直政がテヘッと笑う。

「寝る時は解放的じゃないとね!」

忠勝、必死の防衛戦。
攻める直政、逃げる忠勝。

最後は忠勝が力で勝ち、直政を拘束するように腕の中に閉じ込め、布団に倒れた。

「判ったから!これで我慢しろっ」

忠勝に力一杯抱きしめられた直政がモゾモゾと抵抗する。

「平八、苦しい〜っ」

気付いた忠勝が囲いを緩め、その間に、

「ん〜っ、平八の匂い、大好き」

と首筋に鼻先をくっつけ、くんくんしながら、

「チュウしちゃえっ」

直政が首筋に吸い付いた。 それを忠勝が慌てて引き剥がす。

「こ…っ!やっぱり帰れっ」
「えぇっ!?男でしょ!二言なんて、有り得ないよ!」

囲いが外れた事に、今度は直政が忠勝に抱きついた。

「卑怯はどっちだ!隙を見て、吸い付くなっ」
「しょうがないじゃん。平八の匂い嗅いだら、したくなっちゃったんだもん!」
「理由にならん!」
「なるの!もーっ、そんな匂いさせてる平八が悪いんだからね!責任取ってよ!」
「な…っ!帯を引っ張るな!」
「少しくらいいいじゃん!」

再び攻防戦。
一晩中続いた攻防戦に寝不足な二人。






翌朝。
「お前ら何してたんだよ?」と皆にニヤニヤと聞かれちゃいます☆

「もう…ヤボな事聞かないでよ!」

直政は頬を染め下を向く。
忠勝は慌てて、弁明。

「誤解だ!何もしとらん!」

忠勝の慌てっぷりに、更に誤解が生じます(笑)
自ら外堀を埋めるその名は本多平八郎忠勝☆








終わる。


司岐ぷ〜が副タイトル考えてくれた(笑)

20060515   佐々木健