11月12日の功名ヶ辻をみて。
三成が斬首される回です。

城前で三成に会う正則の辺りから。



司岐:正則は大谷さんの事があるから、三成が生きてる事に怒ってたね〜

佐々木:正則ブロークンハートやもん。 多分「ワシも紀之介の所に行くんじゃ!」ってのを家臣達に止められました。

司岐:うん。大暴れだったよ。例に漏れず、刀振り回してな。 呑んでも、呑んでも、全く酔わないの。 切ねぇー(泣)

佐々木:一晩中「紀之介〜紀之介〜」って騒いでた。 家臣も貰い泣き。

司岐:うわ〜んっ! 考えただけで、泣けてきたよ!!(泣) 最後は、喉も枯れちゃってさ…蹲って、声もなくただ肩を震わせるだけでさ(泣)

佐々木:イジイジだよ。泣き疲れて寝ちゃって、夢で大谷さんに会うんだよ。

というわけで、


「夢で会えたら」(正則×吉継)








ウトウトと眠っていると、声が聞こえる。

「――松…市松っ」
「…きのすけ…?」

目を開くと、白い頭巾と白い衣に包まれた人物が覗き込んでいる。
顔には苦笑と呆れが混じっていた。
正則が会いたいと思っていた大谷吉継だった。

「もう。そんな所で寝てると、風邪ひくよ?」
「紀之介、じゃあ…っ!」
「うわぁっ!」

ガバリ☆と目の前の吉継に抱きついた。
勢い余って倒れそうになるのを支え、きつく抱きしめる。

「紀之介〜生きておったんじゃな!」

正則の言葉に吉継が首を傾げる。

「どうしたの?何かあった?」

「何かって関ヶ原で…」
「関ヶ原?」

何の事?と見つめ返してくる瞳には嘘やからかいは含まれておらず、

「あれ?」

会津の上杉を討つために家康が各大名を集め、向かう途中に三成が挙兵した―――

「悪い夢でも見た?」

優しく微笑み、吉継が正則の頭を撫でる。
子供扱いされているような気がするが、吉継が居る。その事だけで正則は嬉しかった。
何故居るのか、戦は?とかそんな事は些細な事に思えた。

「う〜む?…そうかもしれんな!」
「仕方ないなぁ…ほら、膝枕してあげるから」

吉継が座を正し、膝をポンポンと叩く。
言われた事が理解出来ずに、間抜けな顔で、

「へ?」
「へ?じゃないよ。横になったら?何か顔色、すごく悪いよ?」

モソモソと頭を乗せる正則。

「そうかのぉ…そう言われたら、グラグラする気が…」

そして。

「…酒臭い。なんだ。心配して損した」
「いたっ!」

ポイ、と無造作に正則を膝から落す。
でも、涙目の正則の額に、笑いながら唇を寄せた。

「ホント、馬鹿なんだから…」

額に触れた布越しの口付けが離れると、正則はガバっと起き上がり、吉継と向き合う。

「おう、ワシは馬鹿じゃ。考え無しで突っ走るばかりじゃ。…だから紀之介が居てくれんとイカン。ずっと側に居てくれぃ」

ずっと言いたかった。
断られるのが怖くて言えなかった。

「ずっと?」
「おう、ずっとじゃ」

真剣な眼差しに吉継が、ゆっくりと瞬きをし、

「うん。そうだね…」

と微笑んだ。

「!?」

普段あまり見せない柔らかな視線に、正則の胸がキュウとなる。
酒臭いとは言われたが、大谷吉継と言う男は、本気でイヤなら見向きもしない男だ。それを、膝に乗せ(さっさと落されたが)額に自ら口付けを仕掛けてきたとは、是如何に!?

「(答えは一つ!)紀之介っ!」
「ん?」

ガッシリ肩を鷲掴み、正則が小さく呟く。

「ワシも、紀之介に口付けたい」
「…駄目って言ったら?」
「それは…その時は、我慢する」

途端に悄気る正則。 吉継の瞳が、僅かに緩む。

「してみたらいいのに…」

吉継の言葉に正則は顔をあげ、顔を伺う。そこには先と変わらず柔らかな笑みを浮かべている。
意を決し、いつも吉継の顔半分を覆う布に手をかけ、ゆっくりと外す。
正則は目を見開いた。
吉継の顔には包帯も巻かれておらず、白く透ける様な素肌があった。

「紀之介…な、治ったのか?」
「うん。内緒にしててごめんね」

吉継の体を蝕む、不治の病といわれていた、ライ病が…治った。

嬉しくて正則は吉継の体を引き寄せ抱き締めた。

「良かった!良かったのぅ…」

ギュウギュウと隙間無く抱き締められた吉継が、苦しいのか、ほんの少しだけ身じろぎする。
些細な抵抗を敏感に感じ、正則は慌てて腕を緩めた。

「すまん!痛かったか?!」
「別に、痛くはなかったけど…」
「そうか?あー…その、どうも、力の加減がよう分からんのじゃ。すまん」

反省するように頭を掻く正則。その手を、吉継がそっと引き寄せる。

「何謝ってるの?それとも…今からその、加減が分からない事を仕掛けるつもり?」

吉継の手に導かれ、覆面の無い口元に、正則の指が触れる。

「!!」

カリ、と上目遣いのまま爪先を齧られて、正則の理性が飛ぶ。

そのまま吉継の手を握り、空いている手で後頭部を支え、笑みを型どる唇を塞ぐ。
触れるだけの口付けから、唇を舐めると、薄く開いた。そこから舌を侵入させ、吉継の舌を絡めとる。

「ふ…っ、ん」

腹の減った赤子が乳を欲するように、正則は飽く事なく吉継の唇を蹂躙する。
息継ぎすら奪う勢いに、襟元を握り締める吉継の指先が力なく震えた。









遠くから声が聞こえる。

「―さま!正則様!」

その声に、反応しようと意識が向かうと、吉継の存在が朧気になる。

そして、霧散した。

「紀之介!?」

目を開くと、邸の天井が目に入った。


―――夢?


靄がかった頭を一振りし、鉛のように重い身をようよう起こす。
脇に転がる徳利や抜き身の刀をぼんやりと眺めるうちに、正則の瞳がじわりと滲んだ。

「なんじゃ…やっぱり、もう…」

それから先は、口に出したら本当に認めるみたいで言えないけれど。

さっきまで本当に傍に居たみたいな唇の感触に、正則は小さく肩を落す。





最後はちょっと、正則がお馬鹿さんです。
というか、ウチらが馬鹿です。
先に謝ります。
ごめんなさい。























そして――



「…あぁっ!なら、何であそこで起きたんじゃ、ワシはっ!イイトコだったのに!」


ジタバタ悔しがる正則。













今日は、続きを見るためにズル休み決定です。





終わり。


スミマセン。本当、ふざけててすみません。
だって、悲しすぎたんです。

20061121   佐々木健&司岐望