白 正則×吉継 |
床に伏す姿を見て、息が詰まった―――同時に安堵もした。 彼はやっと、苦痛から解放されたのかと―――しかし、自覚したのだ。 ―――自身の想いを――― 部屋に入った瞬間、目に映った物は、この屋敷の主である人物が己の姿を隠す為に普段から纏っている白い布だった。 その布の塊が床に倒れていた。手土産にと持ってきた酒瓶が手から放れ床へ転がる。 息が詰まり声が出ない。しかし、体は惰性で動き、彼を抱き起こしていた。 もう、動きを止めてしまったのかと思った身体は、息をし、温かかった。 そうして、やっと自分も息を吸い、吐く事が出来た。 「紀之介、おい、起きんか紀之介」 揺すり呼び掛けると、少し眉を寄せた後、ゆっくりと目が開かれる。 「あれ?市松?どうしたの?」 現状を把握出来ていない吉継が瞬きを数度し、正則の顔を眺める。 「どうしたでは、ないわ!ぶっ倒れる様に寝おって、死んでおるのかと思ったぞ」 溜め息混じり睨みつけるも、吉継は面白そうに笑っている。 「勝手に殺さないでよ。何だか眠くなって、寝てただけだよ」 「心配して損したわって言いたいとこじゃが…調子悪いだろ?」 真面目な顔をする正則に、吉継は笑みを消す。 「図星か」 目を覚ましたというのに、体に力が入っていないのが良い証拠だった。 「たまたまだよ。今日は何だか力が入らなくって、ふふっ。市松にしては冴えてるね」 再び笑みを浮かべる吉継に、正則はムッとして、 「茶化すなや。ワシでも解るわ。…だがなぁ。ワシは自身にも鈍感じゃったと、気がついたわ」 少し開いた障子から外を眺めながら、正則は吉継を抱え直し、自身の胸に寄り掛らせた。 正則は秋を思わせる空を眺め、吉継は床に視線を落とす。 ―――暫しの沈黙。 吉継は言葉を望まず。沈黙を祈る。 しかし、正則は言葉を紡ぐ為の空気を吸い込んだ。 「ワシは、紀之介が…」 「市松、言うな」 厳しい言葉遣いをし、正則を睨みつける吉継の視線を真っ直ぐと受け止める。 「流石、紀之介じゃなぁ。ワシより先に気がついてたか」 口端を上げて笑う正則に溜め息をつくと、 「一生気付かなくても良い事を」 動く事の出来ない体では、立ち去る事も出来ない吉継を抱き締める。 「気がついてしまったんじゃ。諦めて聞けぃ」 「聞かん」 すっかりふてくされた吉継は珍しい。その事が何だか嬉しい正則は抱き締める腕を更に強めた。 「ちょっ…市松っ!苦しいって」 少しだけ、力を抜くと、吉継が息をつく。 「言うぞ」 「だからっ…」 正則は大きく息を吸い込むと、天井に向かって… 「ワシゃぁ、紀之介が好きじゃあ!」 叫んだ――― 部屋中どころか、屋敷中に正則の告白は響きわたった。 直後、屋敷のあちこちで食器の割れる音や、何かが倒れる音、奇声等が聞こえる。 それらを聞きながら、吉継は大きく溜息をついた。 「…本当、市松って馬鹿だよね…」 「おう。ワシは馬鹿じゃからのぅ。何しでかすかわからんぞ」 ―――だから、もっと生きてろよ――― 終わり。 |
てへっ☆ やらかした? もしかして、佐々木はウッカリやらかした? 携帯で2時間で作成。 正則×吉継でも、大谷さんは三成が一番なんです。 大谷さんと三成は親友とか恋人とか家族とかそんな関係を、超越しちゃってる感じです。 正則は一番になりたくて頑張ります☆ 病に掛かっている大谷さんは、人にそういう意味で好かれるのが怖いんです。 ドリーム全開でやらかしたなぁ。自分。うん。 20061001 佐々木健 |