※注意※ 「熊本城の熱い夜」は「婚前旅行は朝鮮です」の後時話です。 言っておきますが、エロ話です。 それしか無いような勢いです。 それでも宜しければ、どうぞ。 下へ |
熊本城の熱い夜 清正×行長 |
熊本城、本丸の一室。 行長は、ふかふかの布団にぽすんと俯せて目を閉じた。 「あー…腹一杯。満腹〜…」 繰り出した城下で、料理と酒を心行くまで堪能し、身体も心も満足したせいか、とろとろと優しい眠りがやってくる。 「…彌九郎」 眠りに意識が沈んでいく行長を遮る様に名が呼ばれた。 その声には棘は無く、包み込む柔らかさを持っていて、行長は夢心地のままもぞもぞと仰向けに寝返りをうつ。 「彌九郎」 「う〜…なんやぁ…虎」 返事はするものの、瞼が薄く開いたり閉じたりを繰り返す行長の頬を、清正はそっと撫でて、その壊れ物を扱う様な指が擽ったく、少し眉根をを寄せて肩をすくませる行長の額、瞼、鼻先、頬にと清正は口付けを降らせた。 「虎ぁ…擽ったい…」 今だ眠りの意識が強く、行長は振り払いもせずに、笑っている。 そんな姿を楽しそうに眺め、清正は薄く開いた行長の唇を塞いだ。 「う?ん…」 未だ何をされているか分からない行長は、手に触れた清正の袖を無意識に掴む。 清正は行長の歯列を割り、舌を侵入させた。 「んぅ…んっ…は」 侵入させた舌で行長の口内をなぞり、舌を捕える。 ここまでされれば、流石の行長も完全に覚醒した。 「ん…っ、ちょっ…虎、何すんねん…っ」 寝込みを襲われる事は珍しく無いが、今日は自分の他にも正則や吉継が居る。 (今日はアカン…っ!) 簡単に流されるわけにはいかないと、行長は儚い抵抗と思いつつ、覆い被さるように屈む清正の胸を、ぐいぐいと押してみる。 「虎…虎っ!」 「――…何だ?」 「今日はほら、その、紀之介はんとか居てるしっ、それに…」 「久しぶりだから、声が聞こえると恥ずかしい…?」 ちゅ、と行長の口端から音を立てて唇を離し、清正が片眉を上げて笑う。 何もかもお見通し、と言ったその顔に、行長は羞恥で頬を染め、濡れた唇を尖らせた。 「久しぶりやなくてもっ…人に聞かれたら、恥ずかしいっちゅうねん!」 誰も聞いてなくても恥ずかしいものなのに――― 「…なら、声を出さなければ良い訳だ」 良い案だろ?とでも言う様に清正は口端を上げる。 (な、なんちゅう事を!?) 何とか清正の手から逃れようと、行長は手を突っ張ったり、身をよじるが、膝を押さえるように清正が跨いでいる為、逃げる事が出来ない。 「ちょっ!やめや…俺、ホンマに恥ずか死にするわ」 「紀ぃ兄も一度位しとけと言っていたな」 清正の言葉に夕方の出来事を思い出す。 吉継にカマをかけられて、清正を他の誰にも取られたくない。 そんな独占欲を一番聞かれたく無い相手、清正に聞かれていた事を――― 「っ…――!!」 思い出してしまい、行長の顔が湯気も出そうな程赤くなり、逃れようとしていた抵抗も止まった。 好機とばかりに清正は行長を腕の中に閉じ込め、耳元で囁く。 「それに、どれだけお前を抱いてない事か…限界だ」 (お前が欲しい…) 吐息と共に囁かれ、行長は首をすくめ、固く瞳を閉じた。 清正の心臓の音が、驚く程近くで聞こえる。 久しぶりに嗅ぐ清正の匂いや体温に、行長の身体がじわりと熱を孕む。 「くそぅ…っ」 埋めた胸元で、行長は浅い呼吸を繰り返した。 気持ちに正直な身体が恨めしい。 欲しがってくれている清正に、身を委ねたいと、確かに自分も思う。 しかし――。 「――せやけど…っ、恥ずかしいもんは、恥ずかしいんやもん…っ!」 ぎゅう、と袖を握りしめ、行長が唇を噛み締める。 清正は、腕の中で小さく縮こまる行長の赤くなった耳たぶに触れると、 「…――なら、二人で恥をかけばイイ」 熟れた果物を食むように、かり、と耳殻に歯を立てた。 「何言って、や…っ」 竦ませた肩を押し、うっすらと香る首筋を舌でなぞる。 獣が味見をするような仕種に、行長が不安そうな声を漏らした。 「ちょ…、やめ、虎…ぁ」 「止めない」 「そん…あっ」 行長の夜着の隙間から、清正の熱い掌が入り込む。 掌は鎖骨から胸の飾り、腹筋から脇腹へと身体の線を確かめるようにゆるゆると進み、気になる部分を掠めるたびに震える瞼に、清正は小さく口付けを落とした。 「…知ってたか?この凹凸、俺が気に入ってるって事…」 腰骨の周りを、指の腹でぐいと撫で摩る。 「や…っ」 産毛だけを撫でるような、緩い親指の動きに、行長が堪らず清正の腕を掴んだ。 「どうした?」 問いかけと共に、清正が行長の口端をぺろりと舐める。 止めろと言ったところで止める訳じゃないのに、聞くなんて、意地でも合意の元を得る気の清正はズルイと思う。 答えない行長に、焦れた様子を見せる事無く清正は忍ばせた手で体の線をなぞっていく。 「――っ…アホ…」 「ん?」 「…いじめっ子」 「もう、子ではないな…」 いじめは否定しない清正に行長は、ムッとした表情で清正の衿を掴んで、 「優しくしろや!」 噛みつく様に口付けた。 「つ…っ」 突然衿を引かれた清正が、上体が傾ぐのを片腕で耐える。 体重がかかりすぎないような配慮に、行長は擽ったい気持ちで一杯になる。 (もぉ…ほんま、この男は…) やる事はやるくせに、さりげなく自分を気遣う清正。 下唇を甘噛みし、鼻先を擦り合わせ、目元を染めた行長が清正の首に腕を回した。 「虎…」 「なんだ?」 「…下手な事しよったら、また家出やからな?」 睨み付けるように呟き、唇を尖らせる。 清正は緩く笑うと、 「善処する」 飴のように濡れた行長の唇をペロリと舐め、乱れた夜着に手をかけた。 「ん…っ」 湿度の無い、残暑の空気に素肌が触れる。 微かに肌を粟立たせた行長に、清正が瞳を細めた。 「ふ…肌寒いのも、今のうちだ」 「なっ、ん…!」 気色ばむ行長の唇を奪い、熱い掌で胸を弄る。 小さく立ち上がった粒を指の腹で押し潰されて、清正の袖を握りしめる行長の手に力が篭った。 「や…そこ、そんな弄ったかて、何も出ぇへんし…っ」 指と舌で執拗な程左右の凝りを愛撫され、胸元で動く清正の頭を抱え込む。 「だが、嫌いじゃないだろ?」 「な、ん…」 下唇を触れたまま喋る為、微かに撫でる様な感触に清正の頭を抱える手が震え、力を緩めた。 その隙に手の囲いから抜け出すと、胸を這う手はそのままに、行長の唇を塞ぐ。 「んっ…んん」 目を固く閉じ、懸命に合わせてくる行長に、目端を緩めて笑うと、愛撫していた胸の飾りを解放し、手を下に下げた。 その際脇腹を緩く撫で、行長の体が小さく震える。 「あっ…や…ん」 舌の動きが止まるのを、清正が強引に絡める事で、再び口付けに意識を向けさせ、下を緩め取り去った。 「!?や…ちょ」 「なんだ?」 いつの間にか全てを脱がされていた行長が抗議する様に腕を掴む。 言わんとする事が解っている清正が、少しだけ唇を離し問掛けた。 「……虎…脱いでへん…」 うるんだ瞳で睨む行長に、意地悪な笑みを浮かべる。 「お前が脱がせてくれるんだろ?」 「う〜…やっぱイケズやぁ」 そう言いながらも、清正の帯に手を伸ばした。 着物越しに触れる行長の震える指に清正は満足そうに微笑むと、行長の顔に口付けを降らしていく。 そんな状態の為、下を見る事が叶わず、手探りで帯の留めている所を探して強引に引っ張り外した。 「ふ…っ」 吐息に似た息継ぎが、どちらともなく零れる。 薄く目を開けた行長は、はだけられた清正の胸元に息を飲んだ。 「――っ」 身体にのしかかる、鍛えられた厚い胸板。 心地良い重さを併せたその存在感に、行長は久々ともいえる今からの行為を感じさせられて、微かに戦いた。 「――…もう、我慢できないのか…?」 含み笑いを口端に乗せ、清正が揺れる行長の腰を撫でる。 無意識とはいえ、浅ましい気持ちを指摘されたようで、行長は、恥ずかしさから逃げるように体を捻った。 「アホ…っ、お前と一緒にすなっ」 必死に膝を擦り合わせ、期待に起ち上がりかけていた自身を隠す。 「――…そうだな」 行長の秘め事を嗅ぎ取って、清正が笑みを深めた。 素直じゃ無くて、恥ずかしがり屋な行長の、胸の内など手に取るように判る。 腰骨から臀部の丸みを熱い掌で撫で下ろし、清正はそのまま双丘の狭間に指を忍び込ませた。 「ちょっ、虎っ!?」 少しかさついた指先が、入口の在りかを確かめるように真奥で蠢く。 それに対して、擦り合わせていた膝が僅かに開き、すかさず清正は行長の膝を割り、間に割り込ませた。 「やっ…!」 立ち上がり掛けた自身が清正の目に晒され、羞恥で身を震わせる。 行長の隠し事を暴いた事で、また一つ清正の中で情欲の火がともった。 「俺と一緒にするな。と言ったわりに…」 「…わ、悪いか!?」 「いや、悪くはないな…」 羞恥で真っ赤になりながらも、強気な姿勢を崩さない行長に、どうにも意地悪を仕掛けたくなる。 太股の内側に手を滑らせ、中心に近付けると再び膝に向けて手を滑らす。 期待した快楽を得られなかった行長が息を飲み、顔を歪ませるのを見て清正の口に笑みが浮かんだ。 「どうした?」 「!…その、言葉、まんま返したる!」 触れて来ない清正を罵倒したく、でも、触れて欲しいと思われたくない行長の思いとは別に、中心は序々に存在を主張し始める。 「どうして欲しい?」 清正は中心には触れず、その周囲をゆるゆると撫で行長の反応を窺った。 「喧し…っ、アホ虎っ」 次第に形を成してゆく身体の欲求から、目を離したくても離せない。 双丘の狭間に潜む清正の指が、真奥の敏感な襞からゆっくりと入り込む。 「――あ…っ!?」 後少し、というところで躱されるもどかしさを追っていた行長が、突然の出来事に背をしならせる。 きゅう、と吸い付く行長に、清正が口端を緩ませた。 「もっと欲しがれ…」 「!!」 深く潜らせた指を、くの字に折り曲げる。 「あ、あ、や…っ」 清正を睨み付ける瞳に哀願の色が混じり、後ろを探る腕に行長が思わず爪を立てる。 隠すことの叶わない行長の姿が、清正の眼前で天を突き、羞恥と期待で微かに震える。 「も、それ、や…っ」 下唇を噛み締める姿に、清正は己の下肢を擦り寄せた。 「彌九郎…」 「あ…、なっ」 いつの間に腰の物を取り払ったのか、濡れた感触を残しながら、行長の大腿を清正自身が辿って行く。 「どうして欲しい…?」 低く掠れた清正の再度の問い掛けに、行長は堪らず唇を噛み締めた。 「――っ!」 どうして欲しい、だなんて、今更聞かずとも、絶対に分かっているはずだ。 是が非でも言質を取ろうとする清正に、怒りで腹の底が熱くなる。 ――だが、視界に入り込む己自身は、酷く正直な姿を見せていて。 「も…っ、こんなん、嫌や…っ!…お前がっ…来る気あらへんのやったら、離しっ」 震える両手で、なけなしの抵抗の様に、裸の胸を押す。 少し伸びた爪が肌に食い込み、清正の喉が無意識に鳴った。 (少し、やり過ぎたか…) 囲い込んだ獲物は羞恥で頬を染め、満たされない欲に呑まれないよう、浅い息継ぎを繰り返している。 素直な言葉で無いにしろ、行長から「我慢できない」と云う台詞を引き出したことに、清正は満足そうに目を細めた。 「なら…遠慮は要らんな」 「――や…っ!」 予告も無しに、中心で息づく行長にするりと指を添える。 搾り込むように、二、三度擦り上げただけで、清正の指が湧き出した行長の体液でぬらりと濡れた。 「あ、ぁ…っ」 下肢に与えられる、天井へ引き上げられるような快感に、行長の内股が切なく震える。 清正は真奥を探っていた指を引き抜くと、行長の蜜を自身に塗り込み、素早い動作で身体を開かせた。 「彌九郎…っ」 「――っ!!」 圧倒的な質量が、行長の奥を侵略してゆく。 「ひゃっ!…あ、あ…あぁ…」 悲鳴にも似た嬌声と生理的にあふれる涙が見開いた瞳から溢れ落ちた。 強張った身体が清正を締め付け、そのきつさに清正の額に汗が滲む。 「っ…力を、抜け」 「はっ…ああぁっ…」 反射的に逃げる腰を捕え、萎えかけた行長自身をやんわりと包み込んで、快楽を引き出す様に擦りあげた。 「あ、あぁんっ…やぁ」 未だ止まらない涙を口で吸い取っていくと、少しずつ行長の身体がほぐれてくる。 狭いながらも締め付ける力が弱くなったところで包んでいた行長を解放し清正が動き始めた。 「彌九郎…」 「あ、んんっ…と、ら」 涙でうるむ瞳で、それでもしっかりと清正の顔を見つめる。 行長の薄く開いた唇に軽く口付けを落とすと、ゆっくり動いていたものを徐々に激しいものに変えていった。 「と、らっ!あ…あ、あんっ」 ぎりぎりまで引き抜き、一気に奥まで叩きつける動作に行長の膝が震え、何かにすがるように清正の腰に足を絡める。 その行動が行長の素直な清正を求める姿で、知らず口元に笑みが浮かび、腰を持ち上げて角度を変えて貫いた。 「――っ!!」 行長の喉から、声の無い悲鳴が迸しる。 立膝の姿勢で攻めてきた清正に、行長は不安定な恰好で翻弄されながら首を振った。 「やっ、ん、これっ、あかん…っ」 触れ合う部分が少ない体勢故か、清正の腰に絡む脚に力が入る。 清正は、強く小西に引き寄せられたと感じた瞬間、内壁の搾り込むような狭さと動きに、眉を顰めて奥歯を噛み締めた。 「この…っ」 無意識に揺れる小西の腰が、絶妙な間隔で清正を飲み込む。 身体は雄弁だと、清正は微苦笑を浮かべた。 律動に、一瞬の間を空ける。 「は…っ、と、ら?」 乾いた唇を一舐めし、静かに涙を流す行長の中心を指で弾く。 「あっ!!」 限界に近い行長にとってその衝撃はあまりに強く、背が反り、腹筋がビクビクと痙攣を起こす。 その姿に行長の限界を悟ると、ギリギリまで引き抜いていた自身を最奥まで勢い良く叩き込んだ。 「――ああーっ!」 腰に巻き付いていた足が伸び、中の清正をきつく締め付け行長は絶頂を迎える。 一気に放出された蜜が行長の腹に溢れた。 「は、ぅん――…っ」 清正を捕らえる腿から、吐精の痙攣が伝わる。 「彌九郎…っ」 汗ばんだ白い太腿を抱え直した清正に、行長が拙く舌を動かした。 「やぁ…っ、な…ん?なか、変…っ」 肉食の獣のような瞳で見下ろす清正に、行長が戦いた様にひくり、と喉を見せる。 未だ内に潜む存在が気になるのか、無意識に揺れ動く腰に、清正が薄く笑みを浮かべた。 「――変とは何だ。俺が居るだけだろう――そんな誘い文句…まだ足りないのか、彌九郎…?」 清正の指が、行長の腹から胸元へと白く這う飛沫にゆるゆると伸びる。 少しだけ理性の戻った行長にとって、その言葉や仕種は羞恥以外の何者でも無く、見せ付ける様に掬いあげる清正を、行長はきゅうと眉間を寄せて睨みつけると、 「も…っ、アホっ!」 「――っ」 上体を引き寄せ、肩口に勢いよく歯をたててきた行長に、清正は雄の顔のまま渇いた唇を舐め上げた。 「今夜は…逃がさん」 「――…っ!や、あ、ぁ…っ」 一度絶頂に達した為、過敏になっている行長の中を、まだ大きさを保ったままの清正が少しでも動けば、もう解放されると気を緩めていた行長を痛い位の快楽が襲い、急速に理性を奪っていく。 「あ、あ…ぁっ…やあっ!」 反射的に力の入らない足で逃げようとするのを、清正が足を高く抱える事で止め、 「やっ…と、らぁ」 「足りない…もっと、彌九郎が…欲しい」 それから、清正は何度か行長の奥に叩き付け、散々鳴かされた行長が意識を飛ばした時に解放した。 息荒く、薄く開かれたままの行長の唇に口付けを落とす。 何度も流れた涙の跡を指で辿り、無茶をさせてしまった事に清正は反省した。 大人になり、我慢や理性を身に付けたはずなのに、行長の前ではそれも容易く崩れてしまう事に自嘲の笑みが浮かぶ。 汗で張り付いた髪をかき上げると、精液にまみれた行長を清める為に、抱き上げ湯殿へと向かった。 「――ぅ、ん」 たぷり、と頬を打ち揺れる湯の温かさに、行長が睫毛を震わせる。 清正は、固く絞った手ぬぐいを手に取ると、微睡む行長の首筋をそっと拭った。 「気分はどうだ」 労りを感じさせる口調に、行長がむずがるように肩を竦める。 「聞くな…アホ」 妙に掠れた声が、激しかった行為を思い出させ、行長は怠い身体を清正の胸に預けて湯舟を睨みつけた。 「好き勝手しよって…このっ」 仕返しの様に、踵で臑を蹴り付ける。 湯の抵抗もあって、大して痛くもない暴力だったが、清正はくつくつと笑うと、 「すまん、悪かった。やり過ぎた」 抱き留めた行長の頭に甘えるように顎を乗せ、 「久々で我慢が利かんかった。身体は正直で困る。うん」 悪びれない物言いに、行長は眩暈を覚えて小さく唸り声を上げた。 「この…アホっ!久々でも、限度があるやろっ」 内腿に残された無数の朱い痕に、唇をきゅうと噛み締める。 「こない痕つけよって…っ!消えるまで見られんようにするの、一苦労やねんで!」 「何を言ってる。どうせ見るのは俺だけだろう」 「自惚れんな!」 清正の自信に満ちた顔を崩したくて、悪態をついてみたものの、清正は動揺も見せず、逆に試す様な表情で行長を引き寄せ、あと少しで唇が触れ合う距離で目を合わせてきた。 「他に誰か居るのか?」 「っ…居ったら、どうする?」 全くの嘘だが、必死に隠し目を反らしたら負けだとばかりに見返す。 とうに嘘だと見破ってはいるが、敢えてその嘘に乗った清正は残酷そうな笑みを浮かべ、行長の背に添えていた手を背骨に沿って下へと下げて行く。 清正の行動に、未だ情事の余韻が残る身体はビクビクと震えた。 そんな行長を愉しそうに眺め、 「それは困ったな…」 「やっ…ちょっ…待ちぃ」 困るか怒るかを予想していた行長にとって、清正の行動はあまりに予想外で、慌てて清正の手から逃れようともがく。 「お前が誰のものか…教えてやらねばな」 行長の抵抗を押さえ込み、喉の奥で笑う清正に、行長は馬鹿な事はするものではないと降参した。 「おっお前だけや!う、嘘位見抜けや」 「なんだ。嘘だったのか」 早々に降参してしまった行長に、もう少し粘ってもらいたかったなと少し残念に思いながらも、行長の口から自分だけだという言葉を引き出せた事に満足そうに抱き締める。 「当たり前や…」 恥ずかしさに真っ赤になりながら、行長は清正の胸に顔を埋めた。 「朝餉を食べたら、紀ぃ兄達を送りがてら、海でも見に行くか」 爽やかな朝。 晴れ渡る空を眺める清正に、行長は恨めしい視線を寄越した。 「くっ…お前の体力、ホンマ信じられへん…」 昨晩、風呂から出てからも結局何だかんだで触れ合っていた事もあり、行長の目には世界が眩しくて仕方が無い状態だ。 ヨタヨタしそうになるのを気力で堪え、行長は隣を歩く清正の肩に手を伸ばすと、 「部屋まで肩貸しっ」 「――構わんが…朝餉なら、運ばせるぞ?」 明らかに「昨晩ナニかがありました」と宣言するような看板を背負って歩く行長に、清正が小さく首を傾げる。 確かに、清正との仲に気付かれているとは言え、あまり表沙汰にはしたくない行長にとって、肩を借りながら覚束ない足取りで人前に出るのは、ひどく恥ずかしい事である。 だが、しかし。 「〜〜っ!運んでもろた方が、余計に色々気ぃ使われるっちゅうねん!」 究極の選択やねんっ!と、真っ赤になりながら唇を噛み締める行長に、清正は確かにその通りだと瞳を細め、 「…分かった。半分は俺の責任でもあるしな。上手い言い訳を考えてやろう」 「半分!?あんだけ好き勝手しよって、半分!!ってか、お前の言い訳、絶対嘘やてバレてまうに決まってるやん!」 「何を言う。城主の言葉の力を信じろ」 「うっわ、何やそれ。汚なっ!」 「ふん。何とでも言え」 清正のあふれんばかりの自信に、行長が肩を揺らす。 いつの間にかたどり着いた部屋の障子をするりと開けた二人は、先客の何とも言えない表情に口を閉ざした。 その先客。 大谷吉継は明らかに怒気を含んだ空気をかもしだし、横の熊…じゃなくて、福島正則はそんな吉継に怯えるように縮こまっていた。 「おはよう。虎之助、彌九郎」 「あ、ああ、おはよう…」 「おはようさん…」 吉継の声は明るいけれど、目が笑っていない。 正則が何かやらかしたんじゃ?と二人は正則に視線を寄越すが、縮こまっている正則は涙目で首を振って、何もしていないと主張する。 明らかに怒っている吉継と、何もしていないという正則。 そう。そういえば、二人は一応(?)恋仲。 そこで清正と行長は何かを思いついた。 『もしかして、市松が何もしなかったから、怒ってる!?』 恐る恐る吉継を見ると、相変わらず目は笑っていないが、至って明るい声で返してきた。 「ううん。全くそんな事無いよ」 『読まれてる!?』 焦る清正と行長。 訳の解らない正則。 「ま、仕方ないか」 一つ溜め息を吐くと、吉継は周りによどんでいた怒気を解いた。 ようやく重い空気から解放されると、正則が話題を変えようと話を切り出す。 「のぅ。朝からエライ豪勢な膳じゃの」 膳には、朱塗りの器に赤飯、吸い物、菜物と鯛のお頭着き焼き物が乗っていた。 豪勢というか、祝い膳だ。 行長にはなにやら見慣れた膳に見えるが、確かに言われてみれば…更に、これらが出る時、いつもダルイ。 そう、清正と――― 行長が嫌な事実に気付き始めた時、清正が口を開く。 「ああ、これは、俺と彌九郎がヤッ…」 バチン★ 小気味良い音と共に行長の手が清正の口を塞いだ。 「ななな何言う…」 「「虎之助と彌九郎が?」」 正則と吉継が口を揃え首を傾げる。 「ななな何でもあらへん!」 「でも、これって祝い膳だよね」 『やっぱり気付きましたか!?』 「そうじゃなぁ…何か良い事でもあったんか?」 『ないです!良い事なんて、全くあらへん!』 「だから、それはだな…」 「虎は黙っとき!」 行長の手を外し、再び事の真相を話そうとする清正を、普段見る事のない形相で睨み、黙らせた。 「ま、聞くのもヤボかな?」 いただきます。と手を合わせ、吉継が箸を手に取る。 まだ納得のいかない正則も吉継に倣って手を合わせた。 『ヤボって…紀之介さん…バレてる?』 「早く食べないと冷めちゃうよ?」 「そうだな」 一人放心状態の行長を置いて、三人は食事を始める。 「ぎゃ〜!もう!嫌やぁ〜!」 叫び、この場から逃げ出そうとした行長だったが、腰に鈍痛が走り、その場にへたり込んでしまった。 「彌九郎…諦めろ」 「うぅ〜…」 「ねぇ市松。食事頂いたら、早々にお暇しようか?」 「へ?」 「お邪魔になっちゃうからね」 「お、おう」 そんなこんなで慌ただしい熊本城の暑い朝であった。 終わり。 |
無駄に長い! 前半のイチャつきが長すぎた!! 何はともあれ、大谷さんは最強です☆ しかし、エロは難しい〜。 正座連合組合の皆様が出せなかったなぁ。 20070504 佐々木健&司岐望 |