清正×行長







本土に比べれば九州と言う土地は冬でも随分暖かいと感じる。
そういえどもやはり冬と言うものは寒いものだった。

先日より火鉢が出されたものの、手をかざせば暖かいが、部屋全体を暖かく出来るものではない。


肥後北半国領主。加藤清正は自室にて火鉢を背に机に向かって、書き物をしていた。
筆を滑らせていた手がぶれる。
小さく溜息を吐くと筆を置き、手を擦り合わせる。
指先が冷たく、関節を曲がり難くなってしまっていた。手の平は指先よりも暖かかったが、冷えた指先に熱が移るにつれ、指先が暖まったのか、手の平が冷えたのか解らない。

「虎、終わったん?」

清正の後ろから声が掛かる。
実はこの部屋にはもう一人の人物が居たのだった。

肥後南半国領主。小西行長だ。
行長は清正が背にしている火鉢の傍に座し、火鉢に網を置いて城下で買ってきた饅頭を焼いていた。

「いや、もう少しで終わる」

先より指先に熱をもったので、清正は再び筆をとり、紙に筆を滑らせた。

「ほか。もうちょいで焼けるで、それまでに終わらし」

小さく返事を返す清正に顔はそちらに向けずとも、満足そうに饅頭をひっくり返す。



無言になるが、沈黙ではない。



暫くして、筆を置く音、紙を折る音が聞こえる。

「ちょうどエエ頃合やで」
「そうか」

立ち上がった清正は火鉢と饅頭を眺める行長を見比べ、行長の背後へと移動する。
隣か正面へ座るのであれば解るが、背後へ回った清正を不審に思った行長が首を回して見上げた。

「…なんや?」

行長の問いには答えず、後ろに座り込むと、行長の胴に腕を回し抱き寄せ、清正の突然の行動に慌てた行長は饅頭を返す為に持っていた箸を取り落としそうになる。

「ちょ!なんやねん!!」
「寒い」

火鉢に近くいた行長は随分と暖かくなっていて、身体の冷えた清正には少し熱く感じられるほどだった。

「ほな、火鉢にあたり!」
「火鉢よりも暖かそうだった」

そう言ったものの、行長の羽織から伝わる熱を清正の冷えた指先が吸い取り、冷えていく。
清正は更に熱を求めるように、合わせから手をしのばせ行長の肌に直接触れる。

「ひゃぁっ!」

突然触れた冷たい手に全身が鳥肌となる。しかし、清正はそんな事お構いなしといった風に胸をゆるりと撫で、脇腹に移動させた。
その間も、行長は清正の手を止めようとするが、もう一方の手に捕われる。

「お前は熱いな」
「虎が冷た過ぎや!俺で暖をとるなや。冷たいっちゅうねん!もう離し!饅頭が焦げるわ!」

冷たさと、また違う感触に首を竦ませる行長の頬に口付けを落としつつ、皿に饅頭を移動させる。

「これで文句はないだろ」
「大有りや!」

ジタバタと暴れる行長を押さえつつ、清正は行長の羽織の紐を解き、更に袴の帯も解いていく。更に抵抗しようとする行長の耳元で、小さく「寒いんだ」と囁くと、ビクっと再び首を竦ませ抵抗が止む。

「…しようのない甘えたやな」

首を捻り、清正と目を合わせる。両者の口元には小さく笑みが浮かび、合わさった。















貴方の熱をください。


















終わり

何だか久しぶり〜な戦国キヨコニ。
今年は随分暖かいですけど、昨日めっちゃ寒くてですね!
こんな話に。

20061201   佐々木健