好き嫌い
清正×行長






今日も今日とて、清正の邸に居る行長は、清正と繕を並べて夕食を食べていた。


本日の献立。

煮いわし、かぶの羮物、茄子の漬物、野菜の煮物。


煮物の具材は芋、豆、人参、蓮根などが入っていたのだが、食事を進める清正の器にはじわじわと赤い野菜。人参が増えて行くのであった。
増えていく原因は、同じく食事をする行長。

彼が人参をつかんでは清正の器に移し、その器から芋や豆、蓮根をとっていく。

黙って食事をしていた清正だったが、自分の器が人参のみになりそうになった時、言葉を発した。


「おい。彌九郎…」

「なんや?」


少し肩を揺らしたものの、何でもないそぶりで清正へ向き合う。


「ちゃんと食べろ」


溜め息混じりに吐かれた言葉に行長が、何の事だと首を傾げる。


「ちゃんと食べとるやないか」

「俺の器に人参を寄越すなと言ってるんだ」


行長の器には人参が2つ。清正の器には人参が10個程。


「寄越してるんやない。交換してんねん」


はっきり言って屁理屈。


「好き嫌いをするな」

「食えん訳やない。食いたくないねん」


だから好き嫌いをしている訳では無いと主張する行長に清正が大きく溜め息を吐く。

そして人参を自らの口に入れ、数度噛み、膨れている行長の顎を捕え、唇を合わせる。
清正の突然の行動に驚いた行長は更に驚く。清正の口内から人参を移され、舌を絡めとられる。
柔らかく煮込んである人参は舌の動きだけで形を小さくしていき、最終的に行長は飲み込んだ。

唇を離した後、清正は人の悪い笑みを浮かべて行長を見、行長は目元を紅く染め、手の甲で口を拭った。


「な、に、すんねん!」

「お前が自分で食べないから、食わせてやったまでだ。なんなら、もう一つ食わせてやろうか?」

「〜〜っ、自分で食うわ!」


行儀は悪いが、人参を箸で刺し、行長は口に放りこんだ。
その様子に清正は肩を震わせて笑う。








好き嫌いはいけません。










終わり。



司岐に「小西の嫌いな食べ物って何だろう?」と聞いたら、「人参」と返ってきた。
それは司岐の嫌いな食べ物だ!
佐々木は無駄に人参スキーです☆
でも清正人参はなにかしら調理してないと食えません。

20061114   佐々木健