寝相
清正×行長








小西行長。意外にというか、予想通りというか―――寝相が悪かった。

まあ、よく動きまくる。

その隣で寝ているのは加藤清正。なんというか、動かない。
こんな二人が並んで寝ているという事は行長の寝相の被害に遭うのはもちろん清正で。しかし、長年の付き合いの成果か、多少蹴られようが、乗っかられようが、流石にどつかれれば起きたりするものの、大抵寝ている。しかも、清正の凄いところは、行長がピタっと寄り添えば、寝ているにも関わらず、抱き締めるのであった。
お陰で朝起きると、互いに「あれ?」という事があったりする。

因みに、現在の行長の体制は…夢の中で良い事があったのか、万歳風だ。
そして、ついに転がり始めた。



ゴロゴロゴロゴロ、ごんっ。



転がっていった先に立っている柱に額を打ち付けた。

「うぅ〜痛い…」

勢い良くぶつかった為、行長は目を覚ます。目の前の柱に少し驚くと、もそもそと起き上がり、額を擦る。

「(もしかしたら、赤くなっとるかも…)」

そして、よつんばいで布団へと戻ると、ふと清正の顔を見た。

「(……虎って……いつも眉間に皺よっとるよなぁ…)」

何やら難しそうな顔をして眠っている。

「(こない皺寄せとったら、伸びんくなるわ)」

その眉間の皺に人指し指を置いてみる。

むに。

その感触に慌てて指を離すが、もう一度触る。

むに。

「(なんやろ!オモロイ!)」

暫くむにむにしていると、ちょっと我に返った。

「(せや。こない事しとってもアカン。伸ばしたらなな)」

眉間の皺の左右に指を置くと、外側にむかって引っ張る。が、手を離すとまた皺が寄る。しかも、先程よりも深い皺になっている。

「(アカン。逆効果やん)」

思案しながらも、また皺に人指し指を置く。

むに。

「(アカン!オモロ過ぎや!)」

笑い出したくなるのを必死に止める。
そして、再び眉間の皺の左右に指を置き、外側に引っ張る。今度は少し長めに。
しかし、指を離すとまた皺が寄る。

「(ダメダメや。じゃダメ元で…)」

行長は清正の眉間に顔を寄せると、軽く口付けた。
すると、眉間の皺がなくなる。

「(ほよ?)」

瞬きしていると、

「何をしているのだ?」

清正が起きていた。
真っ直ぐと見てくる清正にぎこちなく笑みを返し、

「虎にみとれていました」
「嘘を吐くな」

バレバレでした。
行長は今は皺が寄っていない眉間に人指し指を置く。

「ここ。皺寄っとったから…伸ばしたろ思ってん」
「皺が寄っていた?」
「せや。なんや難しぃ顔しとったで」

眉間に置いた指をくるくるし、撫でる。

「なるほどな…自分では気付かなかったな。それでお前は自分の額を赤くしながらも、俺の眉間の皺を気にしていたわけか」

清正の言葉に、行長は慌てて自身の額を隠す。

「赤くなっとる?」
「なっている。何をしたんだ?」

部屋の柱を指差し、

「あれにぶつけた」

情けない顔で呟く行長に清正が笑う。

「結構痛かったんやで」
「冷やすか?」
「…大丈夫」

清正は行長の頭を引き寄せると、額に口付けた。それに対し、行長がクスクス笑う。

「眉間の皺、寄らない方法が考えついた」
「どんなん?」
「こうすれば良い…」

手で上半身を支え、清正を覗き込むような体制の行長の手をとり、自身の布団の中へ招きいれ、抱き締める。

「!?」
「こうすれば、お前の寝相にも悩まされずにすむしな」

自身の寝相の悪さを知っている行長は文句も言えなかった。
そうして二人は再び眠りにつく。互いの温もりを感じながら。








終わり。



ウチの小西は寝相が悪いです(笑)
いつの間にか縁側まで転がる事もあるだろう。
そんな小西を大人しく寝させる為には、とある事で疲れさせる事です☆

20061017   佐々木健