太陽は少し強すぎるから
総て包んで隠してくれる
月が出たら

出かけようか

【月光浴】








「あぁ、今日は満月だな」

殿はそんな風に言われて空にぽっかり浮かぶ月を見上げておられました。

「散歩にでもでられますか?」

夏の夜。
昼の暑さを忘れた外をゆったり歩くのも良いかもしれない。

ライだ。
そう言われた主はあまり外出を好まなくなり体を少しづつ体を覆う白が多くなっていきました。
それでも今は着物に隠れる範囲なので気が付く人は少ないだろうとは思うのですが…。
嫌なだというものを強要するつもりはありません。
だから、それはそれでいいだろうと思いました。

そんなことを思っていったら意外そうな顔をされてしまいました。

「五助がそんなこと言うなんて、珍しいじゃないか」
「嫌ならいいんですけどね」
「そんなこと言ってないだろ?拗ねるなよ」

くしゃりと髪を撫でられる。
珍しいくらい上機嫌らしい。

「じゃあ、月夜の散歩としゃれ込もうかな」

一刻くらいで戻るよ。
嬉しそうに殿が言われました。
一人で行こうとしているような気がします。

いやいや、それは駄目だから。

思わず心の中で突っ込みを入れてから言葉にしました。

「俺も一緒ですけどね」

なんでかとても残念な顔を殿はしていました。








「一人でも良かったのに…」

そう言われる殿の横を提灯を持って歩きます。
最初は前にいたのですが隣においでと言われたのでその通りにして歩いていました。

「そんなこと言って嬉しそうじゃないか」

後ろから誰かの声がかかりました。
誰かって言っても聞き覚えのある声で…。

「こんな夜中にどうした?佐吉、左近さんまで」
「こんばんは、吉継さん。お散歩ですか?」

そこに居たのは石田様と島様の二人だけで付きの者は居ないようでした。

「こんな夜中に散歩なんて、うちの殿だけだと思っていたんですがね」
「最初に言い出したのはお前だろうが」
「うちも似たようなものだよ。珍しく五助が誘ってくれた」
「そうか。…月明かりだけでも十分だぞ」

提灯を消せということらしい。
石田様に言われて主を見上げて反応を見る。

なんか、嬉しそう…かな?

そう思って火を消した。

「なんか楽しそうですね、吉継さん」
「抜け出して来たような気がして、なんだか楽しいです」
「紀之助も案外子供だな」
「お前には言われなくないね。さっきからどうやって声かけようか伺っていたくせに」
「おや、ばれてるようですよ。殿」
「う…うるさい」

「あれ?其処に居るん。紀之?」

またもや後方から声がかかる。
後方といっても石田様達と話すために振り返っていたので、進行方向ですが。

「弥九郎?」
「おや、皆さんおそろいで。散歩?」
「お前は違うみたいだな」
「ん。まぁ、今帰り〜」

声をかけてきたには小西様で後ろには数人の方が一緒に居た。
その人たちに何か言い置いてから小西様が近寄って来る。

殿と二人で散歩だと思っていたのに…。
少し残念な気がします。

「どうせなら他のも呼ぶか?」
「え?他ってこんな時間に?迷惑だろ」
「そうですね、ただの散歩ですしね」
「けど人数居る方が楽しいやろ」

そんなことを言いながら加藤様のお屋敷に向かっていると連れ立って歩く二人組が見えた。
近寄ってみるとそれは以外な組み合わせだった。

「なんで虎と為広?」

そこに居たのは加藤様と平塚様でした。

「殿こそどうされたんです?このような場所で」
「これから散歩に行こうと思って声掛けに来た」
「虎なんて誘わんでええっていっても紀之優しいからなぁ」
「お二人ともいかがですか?」
「ただの散歩だぞ」
「無理にとは言いません」

「なんだか棘を感じますが、参加させていただきますよ」
「そうだな俺も行こうかな」

そんなこんなで二人追加。
もう要りません。
むしろ皆さん帰ってください。

折角の殿とのお出かけ邪魔しないで頂きたい。

「五助、どうかしたか?」

「なんでもないですよ。それより、福島様の所へは行かれますか?」

「ん?松。そうだな…どうしようかね」

「一応声かけんと拗ねるやろ」

「確かにな」

「餓鬼っぽいとこあるからなぁ」
「貴様に言われちゃ終いじゃ馬鹿虎」
「なんじゃと!?」

「はい。二人ともそこまで」

ぱんっと手を叩いて殿が止めました。
相変わらずお見事なものだと思います。

「吉継さんは扱いが上手いんですね」

感心したように島殿が言う。

そこでようやく皆一緒に歩き出した。

いろいろな話をして。

加藤様と平塚様が一緒だったのは殿に逢いに屋敷に行ったら留守だと言われて帰ろうとしていたところに平塚殿が来て。
珍しく飲もうということになったのだという。

提灯はひとつもない。
それでも月明かりでお互いの顔は見えていた。

「さて、松を呼びに行くのは誰かな?」

屋敷の前に着くと小西様が楽しそうに言った。

「ここは吉継さんじゃないですか?」
「私はそういうの得意ではないんです…すぐに見つかる」
「佐吉行ってみたら?」
「俺?」
「え?駄目か?馬鹿虎じゃひねりなさすぎやろ?」
「…隠れていく必要あるんですか?」
「そのほうが楽しいだろう?」

「家の前でなにこそこそしとるんじゃ…」

そんなことを話していると福島殿が現れました。
思わず舌打ちしてやりたい気持ちを必死に抑えます。

「これから皆で散歩に行こうって話、松も来ない?」
「なんでこんな夜中に行くんじゃ?昼でいいじゃろ」
「月が綺麗だったからさ」

「皆で行ったら楽しそうだろ?」

誘っている殿は酷く嬉しそうで、月明かりできらきら輝く黒い髪が印象的でした。

そのあとは其処に居た皆さんで散歩をしました。
時折言い争いをしながら、皆でとぼとぼ歩きました。

傍から見ればちょっとおかしな集団だったかもしれません。
大の大人が明かりもつけずに何人も。
それに大半の方は腰には二本差しのです。
ちょっと夜中に会いたくはないでしょう。

けれど皆さんなんでか穏やかで
月明かりが穏やかに照らしていたからかもしれないなと

そんな風に思った月の綺麗な夜でした。








終わり


長い…わりに意味が分からないし…
佐々木様が折角くれたのに…
「大谷さんと愉快な仲間達によるお散歩」
愉快な仲間ってどこまでだろう?
一応金吾も?いや、でも。あれ?吉治は?…なんて…ね?
夜にしたのは昼外に出たくない管理人の思いからです…。
苦情受け付けます。
すいません…書き直しも受付ます…。


「砂上の夢」の恭さまからいただきましたvv
沢山の登場人物ですみません。
五助がちょっと可哀想な感がありますが、皆さん揃いで^^
有難うございます〜vv
家宝にさせていただきます!

20070829