Coffee」の続きです〜。
エロはないですよ☆

12月28日位の話です。

またまた恭さまと一緒に書かせて頂きましたvv
Catnap
左近吉継






遮光カーテンの隙間から洩れる光で目が覚める。
昨日の言葉通り、明け方まで寝かせてもらえなかった。
最後も寝たというより、気を失ったという方が正しい。

(今…何時だろう?)

もそもそとベッドヘッドに置いてある時計を引き寄せる。
そこに付箋が貼ってあって…『仕事に行って来ます』と書いてあった。
ああ、だから隣に居ないんだ。と納得して、何だか寂しくなる。
仕方ない事だし、左近さんは気を利かせて寝かせておいてくれたのだろうけど。

「…わがまま」

自分に言う声は、凄く掠れていて、昨夜散々啼かされた事を思い出してしまい、顔が熱くなる。
火照る頬と、渇いた喉を何とかしないと、とまだ睡眠を欲する身体を起き上がらせた。
ふと、指輪が視界に入る。
左近さんが居ないから、代わりに…

チュッ

「おはようございます」

指輪に口付けた。






左近さんが用意していった食事で、遅めの朝食を摂る。

「…左近さん。一睡もしてないかも…」

自分はもう冬休みで、1日暇だけど、左近さんは今日まで仕事だ。

「晩御飯、作ろうかな」

普段、食事作りは左近さんは自分が作ると言って譲ってくれない。
確かに左近さんの方が料理の腕は上で、自分は手の込んだものは作れない。

(でも、今日は疲れてるだろうし)

いつも有り難うと、お疲れ様でした。の意味で、凄い料理を作ろう!と吉継は意気込んだ。

「何が良いかな?」

冷蔵庫を開けると、様々な食材が整然と並んでいる。
材料の心配はなさそう。
そして、料理の本を開いた。

「…どれも美味しそうなんだよね」

ひとまず、和洋中。どれにしよう?
最近の食事内容を思い出すと、洋風が多かった気がする。
和食は…自信ない…。
という訳で、中華にしよう!
と決定した瞬間思い浮かべた料理は、春巻き。

「…流石に春巻きの皮は…あった」

冷蔵庫を更に探ると、チンゲン菜や青菜、キクラゲ等を見つける。

「もしかして中華の予定だったのかな?」








あらかた料理が出来上がった時に、ドアフォンが響いた。

「ただいま帰りました」
「お帰りなさい!」

パタパタと走ってくる吉継をみとめ、左近の顔が綻ぶが、吉継が身に着けているエプロンを見て、不思議そうな顔になる。

「今日は、私が作ってみました」

左近さんみたいに、美味しくはないでしょうが…と照れ臭そうに話す吉継の頭を撫でる。

「有り難うございます。凄く楽しみです」

引き返そうとする吉継の指に絆創膏が巻かれている事に気付き、その手を引き寄せた。

「?どうしたのですか?」
「手…」
「あ、ちょっと切っちゃったんです」

ドジしました。と笑う吉継に、左近の顔は険しくなる。

「左近さん?」
「ちょっと大人気ないんですが…」

左近の指が絆創膏をなぞる。
チリっとした痛みが指先に走った。

「左近さ…」
「貴方を傷付けたのが、私ではないのが、許せない」
「え?」

言ってる事が分からず、吉継は首を傾げる。
左近は自嘲的な笑みを浮かべた。

「…ただの私の独占欲です。気にしないでください」

未だ理解出来ていない吉継の頭を撫でながら、耳元で囁く。

「私は心配性ですから、小さくても、怪我はなさらないでください」

―――貴方を傷付ける者は、貴方自身でも嫌なんです。



そんな事を言った左近さんの首元に目がいく。
耳元に唇を持っていくために近くなった左近さんの首に巻かれたマフラー。
そこに蚊に刺されたように赤い痕。
昨夜付けた痕がくっきりと刻まれたそこに、自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
言われた台詞も恥ずかしかったけれど、視覚からも追い詰められている気になる。

「左近…さん」
「あぁ、これですか?」

そう言ってゆっくりと首筋を見せ付けるようにしてマフラーを外す。
そう思ってしまっただけだとは思うのだけれどそう思うことを止められないほどに色っぽかった。

「会社の子に、からかわれてしまいました。随分、好かれておいでなんですねって」

耳元に囁かれる声は熱っぽい。
昨夜を思い出させるような声に耳をふさぎたくなる。

「左近さん!!」
「どうかしましたか?」

当たり前のような顔をしてそんなことを左近さんは言ってきた。

「近い、です!!」

赤くなった顔で必死に言うけれど、どうにもなんでそんな顔をしているのかわからないとい
う顔をされた。

「吉継さん?」

顔を覗き込まれて本当にどうして良いかわからなくなる。

「どうしました?指、痛むんですか?」

検討違いな心配をしつつ、頬に手を当てられる。
冬の空気を纏ったままだったのか微かにひんやりとするその手にドキリと心臓がなる。
本当にこの人はなんでこんなに自分を追い詰めるのが上手いのだろう?

「吉継さん?」
「ご飯、冷めちゃいます…」

左近さんの胸に手を付いて少し話すようにして小さく呟くと、それはすいません。といって離れる。
着替えてきますね。と額にキスをしてから離れていく左近さんをみながら、どうにもいつもよりも…上手く言い表せないけれどいつもと違う気がして胸元のシャツを握った。
 





着替えてきた左近さんはおいしそうですね。と嬉しそうに言いながら席に着く。

「おいしいと、いいのですが…」

心配しながら出せばふわりと笑う左近さんが居る。

「心配性ですね、吉継さんは」

戴きます。きちんと手を合わせて食べ始める左近さんを見ながら今日何が違うかが思い当たった。

「あ」

小さく呟けばどうしました?とすかさず声がかかる。

「左近さん、眠いですか?」
「…なんでわかってしまったんでしょう?」

バツが悪そうに呟きながら左近さんが聞く。
その答えにいつもより色っぽかったからだなんていえなくてただ微笑む。

「私の前だけにして置いてくださいね?」

そんな姿を見せるのは。
心の中でそういい置いて、不思議そうにしている左近さんにお茶を差し出した。



食事を摂りながらも、左近さんの所作が気になって仕方がない。

(なんで、こんなに色っぽくなっちゃうんだろう?)

普段よりま低い声、ゆっくりと緩やかな動作、少し細められる瞳。

(…それと、私の恋心…かな?)

可笑しいけれど、納得してしまった。




「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
「お粗末さまです」

一つ一つ美味しいと言ってくれた左近に、多少お世辞があったとしても、嬉しくて吉継は喜ぶ。
後片付けをしようとする左近を、リビングへとおしやって、吉継が引き受けた。

「左近さんは、お疲れなんですから!」

ソファーに座らせて、テレビのリモコンと紅茶を持たせる。

「じゃあ、お言葉に甘えて、お願いします」

苦笑が返された。
食器を片付け、風呂の準備をしてリビングへ向かうと、左近さんの頭が揺れて見える。
そっと近づき覗き込むと、目が閉じられていた。

(うたた寝左近さん。珍しい…)

ソファーに肘をついて、下から眺める。
珍しいものが見れて、嬉しくなって声を出さないように笑う。

「一年間、お仕事お疲れ様でした」

背を伸ばして、眠る左近さんの口端に口付けた。

「…ん」

小さく声を上げた左近さんは少しだけ目を開けました。

「左近さん、風邪、引いちゃいますよ?」

そのあいた目に映るように覗き込みながら声をかけると滅多に目にできないような無邪気というか、幼い笑みが浮かんだ。

「え…?」

そのことに驚いて声を出せば、小さく幸せそうに吉継さん…。と左近さんが呟いた。
その笑顔の理由は自分なんだと思うと誇らしくもあり照れたくもなるそんな笑顔。

「なんでしょう…?」

緩んでしまいそうになる顔をどうにか引き締めてそっと答える。

「ずっと一緒に、居てくださいね?」

寝ぼけているのかなんなのか分からないほど真剣な目で左近さんは言った。
やめて欲しい。どきどきしてしまうじゃないか。
本当に壊れてしまうんじゃないかって位心臓が高鳴ってる。

「吉継さん?」

頬に手を添えられて目の前で笑まれたら拒絶なんて出来るわけ無い。

「傍に、いてください」

消え入りそうなほど小さくなってしまったけれど、そう呟けば左近さんは今まで以上に幸せそうに笑った。









終わり


クリスマスから話がずっと続いています。
大谷さんの日記として見ていくといいかも知れません。
恭さまの書かれる文が可愛らしくて、いつもうきゅうきゅしていますvv

20080104   恭さま&佐々木健