またまた左近吉継です。

前回の「Merry Christmas☆」の続きです。

またまた、恭さまと一緒に書かせて頂きました☆


Coffee
左近吉継






待ち合わせしたのは駅前だった。
クリスマスの騒がしさから開放された街はもう次の正月というイベントのために動き出しているように思える。
待ち合わせ時間は午後の6時だった。
開いてみた携帯には5時50分。
少し早めに来すぎてしまったな。
なんて思いながら待ち合わせの場所に行く前にコーヒーショップに立ち寄った。

今日は結構冷えているし、左近さん喉渇いてるかもしれないし。

そんな事を思いながら注文したのはコーヒー。
あまりこういうインスタントっぽいのは好きではないけれど贅沢は言ってられないと店を出たところで待ち合わせ場所に人影を見つける。
黒のコートを着てゆるくマフラーを巻いてたっている姿はとても絵になる。
その人がそっと懐に手を入れて何かを取り出しふわりと綺麗に笑った。
その手の中にキラリ鈍く光る金を認めて顔が赤くなるのが分かった。

「…どうしよう」

絶対自分顔が赤い。
その時きらりと自分の指に光る指輪を意識してしまいまた顔に熱が集中する。

「…ぅ〜」

木の影に隠れるようにして落ち着くのをまとうとしていると後ろから声がかかった。

「かくれんぼ、ですか?」

その声に過剰に反応してしまい手の中のコーヒーを落としそうになる。
それを自分よりも大きい手が抑えてくれた。

「どうしました?」

宥めるように聞こえる声に少しきょろきょろと視線が泳ぐ。

「吉継さん?」
「…時計」

小さくそう呟けばコレですか?と先程見ていただろう懐中時計が取り出される。

「左近さんが…笑うから」

俯くようになりながら言えばすいません。と苦笑いが帰ってくる。

「自覚ないのですが…職場でも言われてしまいました」
「ショクバ?」

何を言っているのか分からないとでもいうように見上げれば時計をしまっていた左近さんと目があう。

「彼女さんからのプレゼントでしょうって、彼女ではないですとは言いましたが、納得はしてくれてないようでした」
「それって…」
「大事なサンタクロースの贈り物です。と言ったのがまずかったでしょうかね?」
「大事な…」
「今年来てくれたサンタさんは私の大事な人だったようなので」

そっと覗き込まれるように視線を合わせて言われてまた顔が赤くなる。

「浮かれています」

そんな事を言われても困ってしまう。

「悩んでくださったのでしょう?私のために」
「それは、…はい」
「きっと吉継さんは知らないで選んでくださったんだろうと思ったのですが、時計ですしね」

時計に何か意味でもあったのだろうかと思うけれど自分には分からない。

「時計に何か、意味あるんですか?」

思わず口に出てしまった疑問に左近さんの顔が近くなる。
後ろには隠れるためにあった木があってもう下がれない。
耳元に寄せられた口元。
息遣いさえ聞こえそうな距離になって囁かれた。

「『貴方を、束縛したい』」

その言葉に声もだせずに固まる。
コーヒーを落とさずにすんだのはそれを予期していた左近さんが持っていてくれたからだった。

「このコーヒー。戴いても良かったですか?」

そう言われて、やっと固まりが解ける。

「あ、はい。どうぞ」

と言ったものの、コーヒーは既に左近の手の中。

「暖まりますが、やはり吉継さんが淹れてくれるコーヒーが美味しいですね」

何だか誇らしく思えてしまうのは、浮かれ過ぎだろうか?

「有り難うございます」
「じゃあ、行きましょうか?」
「はい」

今日待ち合わせしたのは、左近の知り合いが経営しているというイタリアンレストランへ行く為だった。
店に着くと、左近の知り合いシェフが笑顔で出迎えてくれる。
出されたワインも食事も何もかもが美味しかった。
だけど、知り合いと親しげに話す左近は、吉継の知らない人物に思えて、何だか落ち着かない気持ちになる。

(…何だろう?)

シェフが今からコーヒーを持ってくると言う。

「コーヒーは、いらないな」
「え?」

シェフも不思議そうな顔をしている。

「家で吉継さんに淹れてもらうから」
「ええ?」

あてられたな。とシェフは肩を竦め、それじゃ。と左近が席を立った。
現状が掴めずにポカンとしている吉継の耳元で、

「吉継さんのコーヒーが飲みたいんです」

お願いします。と囁かれた。








人気の無い遊歩道を、手を繋いで歩く。
左近が色々と話しているが、恥ずかしさいっぱいの吉継は、頷くのが精一杯だった。
俯くと、左近のポケットから、懐中時計の鎖が覗いている。

『貴方を束縛したい』

そんなつもりで時計を選んだ訳ではないけど。

「あながち違ってないかも…」
「はい?」

先程の落ち着かない気持ちは、自分の知らない左近をシェフが知っていたから。
嫉妬してしまった。

「左近さん…貴方を束縛したいです」

駄目ですか?と見上げると、見惚れる程の笑みを左近が浮かべる。

「吉継さんに束縛されるなら、大歓迎です」
「私は、意外とヤキモチ妬きだったみたいです」

繋いでいた手を解くと、左近の腕に絡めた。

「そんな可愛らしい事を言われてしまいますと…」
「?」

見上げたところに、キスが落とされる。

「今夜、寝られなくなりますよ」

ボフっと音が聞こえそうな勢いで顔が熱くなってしまった。











「コーヒー入れていただけますか?」

部屋に入って後ろ手に鍵をかけた左近さんに言われて顔がまた赤くなる。
期待…というわけでもないはずだけれどどきどきと高鳴る胸を押さえることが出来なかった。
お互いに着替えてからゆっくりと豆を挽いてコーヒーをドリップさせるその作業に手が震えそうになる。

「緊張、していますか?」

くすりと笑われて持っていたカップがカチャリとすこし音を立てる。

「期待、されてますか?」

からかうような口調にさえどきどきしてしまう。
赤くなるその反応さえ楽しむように余裕をみせる左近さんをどうにか焦らせてやりたくなる。
ふるふると震える手を叱責しながら左近さんに近づく。

「左近さん!!」

なけなしの勇気とともに呼びかけた声は思ったよりも大きく出てしまった。

「はい?」
あくまで穏やかに話すから恥ずかしくなるけれどそんな今更あとには引けないと手を握り締めてそれに耐える。

「どうしました?」

左近さんはかっこいいから顔を見てしまえばできなくなる。
そう思って目を強く瞑る。

「吉継さん?」

覗き込もうとした彼に思い切って抱きつく。
そして、首筋に口付ける。
痕が残るほどに。

「…」

思ったよりも綺麗に付いたそれを見つめてまた自分の顔が赤くなるのを感じた。

「吉継さん?」

少し困惑した左近さんの顔をみて、少し心の中でだけガッツポーズをしてみてから赤い顔のまま見つめる。

「いつまでも…余裕な顔してると…足元すくわれますよ?」

強気なままいこうと思っていたのにどうにも続けられなくて俯きながら言うと口付けたところを左近さんがするりと摩っているところが見えた。

「…随分と大胆な事をされる」
「私だって、これくらい…」
「誘うのを誰に習った…と問い詰めたいくらいにドキリとしました」

それでも左近さんはいつものように笑みを浮かべていた。

「今すぐに、総てを奪ってやりたいと思うほどに、煽られました」

カタリと小さな音を立てて左近さんが立ち上がる。

「貴方が思うほど、私は出来た大人ではないようです」

近づいてくる左近さんの首筋には自分のつけた跡がある。

「吉継さんは、そんな私でもいいですか?」

片手で着ていたシャツのボタンをひとつ外した左近さんは見ていられないほどに色っぽい。

「吉継さん?」
「…こぉ、ひ、は?」

どきどきしすぎて舌が回らない。

「コーヒーは、明日…戴くことになりそうですね」

ふわりといつものような笑みを浮かべて左近さんは言った。

「今日は、寝させません」

今度は宣言するように言われて左近さんの腕に包まれた。











終わり。


何か続きそうな終わり方でスミマセン。
はい。続いてますよ☆

反対意見もないので、突っ走りますよ☆(賛同意見もありませんが)

20071230   恭さま&佐々木健