Cake Cake Cake 清正×行長 |
「行長が作ったケーキが食べたい」 真っ直ぐ見つめてそんな事を言い出す奴に、心底溜め息を吐きたくなった。 |
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ |
迫り来る年の瀬。 平成の大不況と言われてようが、年末というのは毎年相変わらず仕事に追われる。 街はクリスマス一色の浮かれ気分に、逆にテンションが下がる自分。 一体全体、何が楽しいんだ阿呆んだら!!と叫びたくなる毎日。 朝から晩まで働いたって、次の日にはまた仕事が山のように積まれていく。 あと数日、あと数日乗り切れば冬休みだと自身に言い聞かせ心身共に参っているのを奮い立たせた。 |
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ |
昼休みにポケットの中の携帯が震え、画面を見ればメールの着信。 送信者は清正。 内容は『今夜は遅くなる』 「そういや、忘年会とか言っとったな…」 遅くなる…か…。 ―――行長が作ったケーキが食べたい 先日の清正の言葉が過ぎる。 清正の為のケーキを清正の前で作るなんて絶対したくなかった。 だけど、居ないなら作れるかもしれない…。 食後のコーヒーを飲み干して、思い切り溜め息を吐いた。 「しゃあないから、作ったるか」 |
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ |
午後からの仕事は意外と早く片付いて、何とか1時間の残業で済み、マンションへ帰る。 ケーキを作ろうにも、この男所帯にケーキを作るだけの材料、道具はある筈が無い。 着替えを済ませ、戸棚を漁ると、以前突然食べたくなって買ったホットケーキミックスを発見。 冷蔵庫には卵と牛乳も有り、ビターチョコもあった。 そしてテーブルの上には吉継からお裾分けで貰った生キャラメルの瓶詰め。 「ま、これらで何とかなるか」 先ずはチョコレートを細かく刻んでおいて、ボウルに卵と牛乳を混ぜ合わせ、ホットケーキミックスを加えて混ぜる。 ほんのり香る甘い匂いに、このままホットケーキを焼きたい気分になるが、それは抑えこんで、チョコレートを湯煎で溶かして生地と混ぜる。 そしてバターを塗った炊飯器のお釜に生地を流し込んで、炊飯のスイッチを入れた。 「じゃ、後は頼んだで炊飯器」 炊飯器に敬礼をし、ダウンコートを引っ掛けて外に出る。 暖冬暖冬と言われてもやっぱり寒いものは寒い。 手袋も持ってくるんだったなぁ〜とボヤいて、スーパーに向かった。 生クリームと苺、シャンパン。 そういや、自分は晩飯無かったと思い出して、惣菜も籠に入れた。 |
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ |
部屋に戻ると甘い香りが漂ってくる。 「もう焼けた頃か?」 キッチンへ続く扉を開けたと同時に炊き上がり(焼き上がり?)のアラームが鳴る。 中を覗けば熱々の蒸しパンみたいな物が出来上がった。 「後はこれを冷ましてっと…」 お釜をひっくり返して転がり出たチョコスポンジを出来るだけ涼しい所に置いた。 それから食事をとって、少し冷めてきたスポンジを冷蔵庫へ入れて、時計を見れば21時を回ったところだった。 「これが手間なんよね〜」 生クリームの泡立て。 ボウルに生クリームを入れて、少量の砂糖を加えて混ぜはじめるが、なかなか持久力が必要で、電動ミキサー欲しいとか思いながらも緩めの生クリーム完成。 それをスポンジに上から掛けて、次に袋に詰めた生キャラメルソースをむにむに掛けて苺をポコポコ置いて…完成。 「よし!約束は果たした!」 俺ってば優しい〜とか何とか言いつつ風呂へと向かう。 風呂に入ってる間に玄関が開く音を聞いて、意外と早いお帰りやんか。と思い、さて、清正は冷蔵庫の中のケーキに気付くだろうか?気付いて欲しいような。気付かないで欲しいような…。 湯船の中でそんな事を考えてたら、風呂のドアが開いて、そこには自分が作ったケーキを片手に突っ立っている清正。 妙なシチュエーションに思わず笑いが漏れる。 「おかえりー早かったやん」 「…ただいま…これは?」 「お前が食いたい言わはったんやろ?」 信じられないといった感じで、ケーキと俺を交互に見る清正に、何だか段々恥ずかしくなってくる。 「も〜!!作ってやったんやし、向こう行けや!」 湯掛けるで!!という言葉は続かなかった。 清正の唇に吸い込まれたから。 軽く触れた唇を離し、嬉しそうに「ありがとう」なんて言うから、湯船で溺れるかと思った。 甘さ控えめなケーキは清正の口に合ったらしく、始終上機嫌な様子で自分が作ったケーキを食べてくれる姿に、また作ってあげても良いかな?とか思ったなんて、口が避けても言わないと決めた。 Merry Merry Christmas! 終わり |
作ったケーキの写メを司岐に送ったら、「キヨコニの小西が作るケーキみたい」と返ってきた。 確かに、と思っていたトコに「キヨコニ書いて」と…。 去年は司岐に迷惑掛けたしね。 がんばったよ〜☆ でも、日付は間に合わんかったww 20091226 佐々木健 |