Dolce
正則×吉継





12月24日クリスマスイブ。

だけど木曜日。
そして学校はお休みだけど、教師は登校。
「休む〜」と駄々をこねる正則を部屋から追い出して、かれこれ1時間。
年末に向けて早めに仕事を終わらせてしまった吉継は暇だった。



「何をしようかな?」

何を見るとは無しにテレビを付ければ、クリスマス一色で、美味しそうなケーキが画面所狭しと並んでいた。

「…ケーキ、か…」

毎年クリスマスには正則がクリスマスケーキを作ってくれる。
去年はオペラで、一昨年は確かブッシュ・ド・ノエル。
今年は昨日から「休む、休む」と駄々をこねていたお陰で何も用意をしていない。

「たまには作ってみようかな」

あまりお菓子作りはしないけれど、レシピ通り作れば大失敗は無いだろうと、正則がよく見ているケーキの本を捲った。






 
◇     ◇     ◇     ◇     ◇







「これで、完成っと」

クマ型のケーキにホワイトチョコレートのプレートやチョコペンで顔を描き込んでクマさんチョコケーキが完成した。

「…あっ…」

テーブルの上を見て、しまった。と思う。
テーブルの上には、クッキーで作ったお菓子の家と、紅茶のマフィンと今完成したクマさんケーキ。
そして、冷蔵庫にはパンナコッタと林檎のコンポートも入っている。
つい、集中し過ぎてお菓子ばかり沢山作ってしまった…。

「どうしよう…」

いつも美味しい料理を作ってくれる正則に食べて貰いたいなって作ってたら…。
ちょっと自己嫌悪に陥っている時に、


ピンポーン♪


「帰って来ちゃった!!」

バタバタとクマさんケーキを冷蔵庫にしまった所で扉が開き、笑顔満面の正則が入ってきた。

「ただいま〜」
「お、おかえり!」
「何か甘い匂いがするのう……お菓子の家じゃ!!マフィンも!!」

くんくんとキッチンに充満する匂いを嗅いで、テーブルの上に鎮座するお菓子の家とマフィンに気付いた正則が歓喜する。

「う、うん。作ってみたんだ」
「吉継の手作りか!!」

テーブルの周りをぐるぐる回ってお菓子の家を眺める正則が微笑ましいけど、お菓子類はそれだけじゃないんだ。と告げなければ…。

「あ、あのね。ケーキも作ったんだ…」
「ケーキ!?」

さっき慌ててしまったケーキを取り出すと、更に正則の顔が笑顔になる。

「あと、ね…」

パンナコッタと林檎のコンポートも取り出すと流石に正則も驚いて言葉が出てこないみたいだった。

「つい、作り過ぎちゃった…」

呆れちゃった、かな?
チラッと正則を見上げると、固まってたけどニヘラと笑って、ムギュっと抱き締められる。

「全部吉継の手作りなんか!!美味そうじゃし、ワシは嬉しいぞ〜!!」

ぎゅうぎゅう抱き締めてくる時は正則が喜んでるという事。

「正則…ちょっと苦しい…」
「ぬお!!すまん!!」

パッと解放されて、今度は私から抱きついた。

「お菓子ばかりで呆れない?」

抱きついた私をやんわりと抱き締め返してくれる。

「何で呆れにゃならんのだ?」

吉継からのクリスマスプレゼントじゃ。と言ってくれる正則に、メリークリスマスのキスを贈る。







そして、全く食事の準備をしていなかったから、二人でポトフを作って、パンとポトフだけのささやかなもの。
だけど、クリスマスイブの晩餐は甘いお菓子だけは沢山で、嬉しそうに食べてくれる正則に私も嬉しくなった。







Merry Christmas!








終わり






張り切って作りすぎちゃった大谷さん。
正則は全部平らげましたよ☆

今年もクリスマスが迎えられました。

20091224   佐々木健