冷やして暖めて
正則吉継






「あ、つ…」

夏真っ盛りどころか、まだ梅雨にも入っていないというのに、この部屋の主大谷吉継は溶け掛けていた。

「……湿気がムカつく……」

今日は気温24℃。しかし、地味に降る雨により、湿度は高く不快指数は吉継にとっては100%を超えていた。

「もうやだ。エアコンつけよ…」

同居人の福島正則(正則的には同棲)に「6月に入るまでエアコン禁止じゃ!」の約束を破ろうと、リモコンを手にとった。

「……ゴメン正則」

今は居ない正則に一応謝って、除湿スイッチを入れる。
気温が高く無い事で室内はすぐに涼しくなっていった。

「ぁ〜…極楽〜」

触るもの全てがベタついているように感じたのが気のせいのよう。
そうしてひとまず落ち着いて、本を読み始めた。








◇     ◇     ◇     ◇     ◇





「ただいま〜今日は蒸すのぅ!」

同居人正則(正則的には同棲)が帰ってきた。

「あ、おかえり」
「おう!ここは涼しい……あ」
「あ…」

エアコン付けっぱなしな事に気付いた時には遅かった☆

「吉継…エアコンは」
「だって暑かったんだもん!」
「しかし6月…」
「暑かったの!」
「でも…」
「正則は暑くて私が溶けちゃっても構わないんだ?」
「いや、溶けちゃいかん!」
「なら、良いよね?」
「う…」

可愛らしく小首を傾げる吉継に、正則は頷いてしまった。
確かに今日は蒸し暑かったから、正則的にも涼しくて良いのだが、正則は帰ってきたばかりで暑かったから今は涼しいと感じるのであるが、この温度…ずっと居ると寒いはず…。

「ちょっと寒くないか?」
「ううん」

寒くないよ。と首をふる吉継の肩に触れると、服越しでも冷えているのが分かった。

「正則の手、暖かい」
「吉継が冷えとるんじゃ」

エアコンを切ろうとリモコンに手を伸ばすより早く吉継が抱き付いてきた。

「よ、吉継!?」
「切っちゃヤダ」

吉継から抱き付いてくるのも珍しく、更に我儘も珍しくて、正則は嬉しさにクラクラ状態だったが、でもやはり吉継の身体が心配なので、気を引き締める。

「でも、冷え過ぎじゃ」

引いてくれない正則に、吉継は口を尖らせる。

「いぢわる…」
「吉継の為じゃ」
「…少し寒いから正則にくっついてられるのにな…」
「う?」

再びリモコンに伸ばした手が止まる。

「正則にくっつきたいから、寒い位が良いの」
「吉継?」
「ね?」

可愛らしく笑う吉継の姿に、とうとう正則は折れてしまった。







という訳でちょっと寒い部屋でくっついていました☆










終わる。

だって、暑かったんだもん。

20090526   佐々木健