甘さ控えめな君
秀忠→利勝








今朝から幾度となく感じる、利勝の恥じらうような視線。
煙草を銜えたまま、俺は思い出すように瞳を細めた。

「ホント、ツンデレだよなぁ…」

俺の前でだけ、明らかに態度を変える利勝。
素直じゃない台詞も、一見冷たい振る舞いも、恥ずかしがり屋な利勝ならではの愛情表現だ。

「くっそー…っ、ほらほら!可愛いじゃないか!」

秘書室からこちらが見えるように、ブラインドを引き上げる。
こうすれば、利勝も俺の姿が見えて心強いに違いない。
腕を組み、ガラス越しに見遣る。
パソコンに向かう利勝は、何か気にかかるのか細い眉を寄せて思案しているようだ。

「なんだよ、利勝そんな顔して……あっ!」

視界に入ったカレンダーに、慌て部屋を飛び出す。
そうか。そうだよ。なんて迂闊だったんだ!

「すまん、利勝!」

大急ぎで側に寄ると、やっぱり利勝の機嫌は曇り空。
ミューズに乞うように、俺はその手を取った。

「利勝からの熱い視線は、俺への合図だったんだな!」
「…何を言ってるのかさっぱり理解出来ませんが。それよりも、手を離してください。仕事中です」

迷惑そうな仕種が、淋しさの裏返しに見える。
つれない物言いに肩を竦め、俺は内緒話をするように顔を寄せた。

「ホワイトデー、用意してくれてるんだろ?俺の心は、いつでも利勝が一番だから安心して――」
「あぁっ!また煙草臭い!社長室で吸うなと何度言わせる気ですか!」
「おっと」

突然立ち上がった利勝が、苛立った表情で社長室へ駆け込む。
ガラス越しに眺めていれば、無造作にシガーケースを握りしめて出てくるではないか。

「利勝?」
「分煙義務から、喫煙室作ったの、あなたでしょうが!」
「――あ」

そういえば、そんなのも作ったかも。

「コレは没収します。さっさと仕事してください。ほら、これ持って行って良いですから!」

引き出しに仕舞われてゆく、俺の煙草たち。
こっそり俺の健康を気にする利勝。
なんて健気なんだ!

「ホント、恥ずかしがり屋だよなぁ」








秀忠は黒飴をゲットしました☆















終わり。

司岐っぺが早く書いてくれてたのに、UPするのが遅く…。すまん。
ってか、秀忠って無駄に前向き。(佐々木)

20090315 司岐望