冬のある日、君と 正則吉継 |
Q、擽ったくて、肩を竦める瞬間っていつ? A、大好きな人と一緒にいて「あぁ…今、 |
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本屋で買い込んだ資料は、思った以上の量になっていたらしい。 出掛ける前から荷物持ちを甘えていたものの、 「…ごめんね、正則。どこかでお茶でも飲もうか?」 手持ち無沙汰な両手を握りしめ、窺うように視線をあげる。 正則は少しだけ考える素振りをみせたが、 ただ、ほんの少し眉を寄せて、首を覆うタートルネックを摘み、 「うむぅ…休憩するんは、家に帰ってからのがえぇのぉ…」 どこも人混みと暖房で熱い、 (…ウソツキ) 人混みや暖房が苦手なのは、正則じゃないのに。 優しい嘘に、胸の奥がきゅうっとなる。 「家に帰ったら…紅茶とカフェオレとココア、どれが飲みたい?」 「ん?うむぅ〜…どれも吉継と一緒に飲めば旨いしのぉ」 うんうんと唸る姿はクマみたいだ。 「ふふ…じゃあ、家に着くまで考えておいてね?」 片方だけ空いている大きな手を見つめ、 正則の靴の横に一回り近く小さな自分の右足がくっつく姿は、 (…もう少し、甘えちゃおうかな) 息を詰めて、そっと正則の手を握る。 「うおっ!?」 冷えた指に驚いたのか、大袈裟な位肩を揺らした正則が、 「よ、吉継、手が…」 「…うん。このまま帰ろ?」 いつもは恥ずかしくて出来ないけれど、 「ダメ?」 「―――!」 上目遣いで乞うと、痛い位の強さで手の平に返事が返ってきた。 (冬で良かった…) いつの間にか、 身体の真ん中がふわふわするのを感じ、 終わり。 |
短い上に当初の小物もフェードアウトしました。 20090307 司岐望 |