奇跡は瞬く間に 清正行長 |
年末年始。 普段は実家に帰省する行長が、今年は仕事の都合で残ると言う。 受験に追われた去年と違い、長い時間を一緒に過ごせる幸いに、 |
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「うー…っ、寒い〜っ」 部屋につくなりコートも脱がず、 「はよ暖まらんかな〜…うー…」 下手をすれば、もぞもぞと火燵に潜り込みそうだ。 初詣で冷えた身体はすぐに暖まりそうにもなくて、 「コーヒー、勝手に煎れるぞ」 幾度か訪れたことのある行長の部屋。 ちょっと待ってろ、とダウンコートを放り投げると、 「なぁ、濃いめにして」 「あぁ」 請われるままに煎れたコーヒーから、香ばしい香りが立ち上る。 狭い火燵だ。隣に座ると、行長の足が自然とぶつかった。 「あ、せや。知っとる?今日、閏秒ってのがあんねん」 「閏秒?」 聞き慣れない言葉に首を傾げると、 「1月1日、午前8時59分60秒」 「は?」 「時刻の修正って言うん?ちょびっと長いんや」 物知りやろ、と屈託なく笑う行長の足が、清正の足を蹴る。 「絶対に録音しよ。邪魔したらあかんで」 「しねぇよ…俺は、少しでも、一緒に居られるのは、 思わず本音を呟く。 行長が、再び足を蹴った。 「――コーヒーが濃いめやった訳、聞きたい?」 「――…っ」 上目遣いで見つめられ、思わず喉が鳴る。 布団の中で行長の爪先が妖しく動き、 「おい…っ」 足首を押さえ付け、慌てて睨み付ける。 コーヒーを飲み干した行長が、再び肩を竦めてみせた。 「何やの。据え膳やと思わへんなら、もう寝るし」 つまらない、と言わんばかりの口調に、清正の指に力が篭る。 擽るようにふくらはぎに掌を這わせ、乱暴な所作で布団を剥ぐと、 「うっわ、寒っ」 「…今の内だ」 「アホ…ぁ、ふ…ん…っ」 覆い被さるような体勢で、苦みの残る口腔を蹂躙する。 逃げる舌を柔らかく追い掛けると、 |
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「うぎゃーっ!9時半!」 「―――」 録音は出来なかったらしい。 終わり |
半実話ww 20090102 司岐望 |