christmas cake
清正行長



クリスマスケーキの予約受付の広告をみていた行長が突然言った一言。
 
「やっぱ、手作りケーキが食いたいもんやなぁ」
 
その言葉が、清正の職人(?)魂に火を着けた。



◇     ◇     ◇     ◇     ◇



「…なんやの?」
 
眠気の残る頭に、目を擦りながらキッチンへと向かうと、目の前には、この部屋では見た事もない什器が並んでいた。
何やら本とにらみ合いをしていた清正が、此方に目を向ける。
 
「ケーキ。手作りが食いたいんだろ?」
「へ?」
 
ケーキ?手作り?
確かにそんな様な事を言ったのは覚えているけど、何となく思った事を言ったまでで、清正に作って貰おうだなんて思った事もない。
それに、清正の料理の腕は…あまり良いとは言えない。
上手く作れるのは、清正自身の好物の唐揚げ(唐揚げ粉使用)位なもので、一応作れる肉じゃがは…微妙だ。
そんな清正がケーキを作る?
あまりにも、無茶だと思う。
 
「あれは、冗だ…」
「どのケーキが良いんだ?」
 
冗談だと言おうと思ったら、清正が先程にらみ合いをしていた本を渡してくる。
その本には、生デコレーションやブッシュドノエル、レアチーズケーキ等様々なケーキが載っていた。
これは、本気だ…。
どうしよう?此処は失敗の少ないレアチーズケーキにすべきだろうか?でも、それだと、ここまで準備してしまった清正に悪い様な気がしてくる。
ええい!ままよ!と生デコレーションを指した。
 
「これや!」
「生デコレーションケーキか…」
 
清正が難しそうな顔をする。
 
「無理やったら、エエよ?」
「作る」
 
俺から本を取ると、生デコレーションケーキのレシピページを食い入るように見る。
 
「俺も手伝おか?」
「いや、それじゃ意味無いだろ」
 
あくまで一人で作る気らしい。
それきり本とにらみ合いを再開した清正を横目に、コーヒーをいれ、リビングへと向かった。




◇     ◇     ◇     ◇     ◇





着替えを済ませ、再びキッチンへ行くと、清正が材料を計っている。
何だか心配でならない。
几帳面な清正の事だから、材料の計測は心配ではないが、料理等はレシピ通りにいかない事も結構多い。
まあ、スポンジさえ上手く焼けたら、成功だと思う。
邪魔にならない所に椅子を移動させて、背もたれを抱え込んで座った。
不敵な笑みも無く、真剣な面持ちで準備する清正を眺める。
自分が洩らした一言で、清正は、ケーキ作りに励んでいる。
つまりは、俺の為にケーキを作ってくれている。
その事を改めて気付き、何だかくすぐったい。
背もたれに顎を預け、笑いが漏れる。
そんな様子に気付いた清正が顔を上げた。
 
「…なんだ?」
「ん〜…なんや。俺って愛されとるなぁ。思って」
「当たり前だろ」
 
じゃなきゃ、ケーキなんか作るものか。と微笑まれた。
参った。断言されてしまった…。
頬が熱くなり、赤くなっているだろう顔を見られたくなくて、俯いた。

―――ホンマ。愛されとるわ俺…。





出来上がったケーキは、スポンジが固めで、パサついていたけど、美味しかった。

Merry Christmas!





終わり


ひがざまのしがの様に相互リンクお礼で書かせていただいた。
クリスマスキヨコニ。

せっかくリクエストをお聞きして書いたのに、あまりのショボさ!!

こんな佐々木ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

20071218   佐々木健