赤鼻の恋人
正則×吉継






本当に、もう冬なのだと感じる今日この頃。
見下ろした向かいのマンションの入口脇では、すっかり葉を落とした花水木が細い体で待ちぼうけを食ったように揺れ、いくつかのベランダには電球がくるくる巻き付いている。
世の中が、多少浮かれ気味になるこの季節。
テレビに映るCMも、ラジオから流れてくる洋楽も、ここ最近はすっかりクリスマス一色で、それはこの部屋の住人にも当て嵌まっていて。
吉継は、正則の歌うクリスマスソングを思い出しながら、小さな溜め息を一つ膝の上に落とした。

「どうしよう…」

何度口にしたか分からない台詞が、ポロリと零れる。
落とした視線の端に映るクマのぬいぐるみを、抱えこんだ。
それは、意外にも手先の器用な正則が、吉継に、と作ってくれたもので、どことなく正則に似ていたりする。

「…あんな事言うから…」






数日前、クリスマスシーズンを告げるCMを見ながら、話題がクリスマスプレゼントの話になった。
何をあげようか。あれこれ考える吉継に、正則は普段見せる事のない、真剣な面持ちで、

「吉継、プレゼントは、何もいらん。…その代わり。と言っちゃなんだが…一つだけでエエんじゃ。お願いを聞いて欲しいんじゃ」

その真剣さに、思わず、

「…うん。良いよ」

と、頷いてしまった。





あの時は、何も考えていなかったが…正則のお願い事…ってなんだろう?


恋人
クリスマス
プレゼント
お願い事ときたら…。


そこまで考えて、吉継は抱えこんだぬいぐるみを潰してしまう勢いで抱き締めた。

「…やっぱり…アレ、だよね…?」

壁掛けのカレンダーを見ても、そこには何も書き込まれていない。
イベント好きな正則なだけに、だからこそ吉継は余計に意識してしまう。

「絶対に、そうだよね…」

むぎゅ、とぬいぐるみの頭に顔を埋め、不安と動揺の入り交じった自分の台詞に唇を噛む。
正則の想いは驚くほど広くて深く、気持ちを疑うことや、愛情を感じない日は一日だってない。

「…ずっと、待っててくれてたんだよね…」

多少暑苦しい所もあるけれど、優しい正則は、自分の我が儘を今日まで聞いてくれたのだ。

(――正則は、どんな気持ちなのかな…)

ぬいぐるみを抱きしめ直し、ソファに背を預ける。
同じように、ドキドキしてくれているのなら、もう、これ以上待たせることは出来ない。

「うー…でも、どんな顔して過ごせばいいんだろ」

クマの鼻に自分の鼻を押しつけ、吉継は小さく唸る。
スキンシップが大好きな正則に、自分の心臓は当日までもってくれるだろうか。

「自信ないよ…」

肺の中の空気を全て吐き出す溜め息を吐いた。








それからの日々は、本当散々だった…。
まずは、学校から帰って来て、抱き着こうとする正則を突飛ばしてしまい、倒れた正則が頭を机の角に強打させてしまった。
そして、風呂上がりにパンツ一枚で出てくる正則を見る事が出来なくて、自室に駆け込んでしまう。
更に、声を掛けられただけで「ほわや〜!」と、奇声を発してしまった。
正則の一挙一動全てに、心臓が飛び出しそうな日々。




そして、ついに来てしまった。
12月24日。
昨日の天皇誕生日だかなんだかの振替休日で、朝からメリークリスマスな正則は、赤鼻のトナカイを歌いながら、洗濯物を干している。

「全然、緊張してない…」

正則の様子は、クリスマスに浮かれてるだけで、全く緊張している所は見受けられない。

「私が意識し過ぎなのかな」

昨日、よく眠れなかったせいで、起きるのが遅くなってしまい、ブランチをつつく。
先程からフォークでつつくだけで、口には入らず、つつかれまくった半熟の目玉焼きは、謎の物体になってしまった。

「もー…」

胸に疼くほんの少しの苛立ちが、今日は朝から何かが起こると期待してたのだと認識させる。

「…だって、起こすのも普通だったし…――」

ぽそり、と口にした自分の台詞に、吉継の頬がじわりと紅潮する。

(「だって」って、何…っ!?まだ朝…いや、昼だよ!どんな期待してたのっ!?)

「〜〜っ!!」

吉継は叫び出しそうな気持ちを押さえ付けると、正則の視線から逃げるようにバタバタとソファへ移動する。
ツルッと滑り出した言葉の向こうに見え隠れするイメージ映像は、今まで何も無かった分、あまりにも刺激が強い。

(うわーっ、どうしよっ!今、もし声をかけられたら、どんな顔すればっ)

「吉継ー?」
「うわっ…い、居ませんっ!」
「はぁ?」

思わず突いて出た返事に、正則が戸惑っているのがわかる。
食事もせず、ソファに座り込んだ姿が気になるのか、不安そうに首を傾げる。

「どうしたんじゃ?…まさか、気分でも悪いんか!?」

慌てて駆け寄ってきた正則に、吉継は顔を見せまいと小さく縮こまる。

「ちが…っ、悪くないっ、悪阻じゃないから!そんな事、まだしてないからっ!」

あぁ…訳のわからない事を言っている。

「は?つわり?」

正則の間の抜けた声に、言ってはいけない事を口走ってしまったと思った。

「あ…そっそうだ!今日は、急遽打ち合わせが入ったから!出掛けてくるね」

慌てて立ち上がり、自室へと駆け込む。
ものの数分で支度を終えると、正則の顔を見ない様に玄関へと向かった。
慌てると普段慣れた行動でも上手くいかないもので、靴がなかなか履けない。
手間取っていると、正則が玄関までやってきた。

「吉継…」
「な、なに?」

そっと正則を盗み見ると、緊張した面持ちの正則が居る。

「夕飯までには、帰ってくるんじゃぞ?」
「うん…」

扉を閉めると、そこで足の力が抜けてしまって、ズルズルと座り込んでしまった。

(正則も緊張してる…やっぱり…)

顔が熱い。絶対真っ赤になってる。
暫く座り込んで、気持ちを落ち着かせると、何とか気力を振り絞って立ち上がった。

「…とりあえず。何処に行こう?」

そう。打ち合わせなんて、真っ赤な嘘。
夕方まで、何処かで時間を潰そう。
そして、正則に向き合えるように、覚悟を決めよう。



◇     ◇     ◇     ◇




「あと、一時間…」

買った文庫本も読み切ってしまい、手持ち無沙汰に携帯電話の時計を見つめる。
自分がどんな表情をしているのか判らないが、先程から様子を窺うような店員の視線を感じてならない。

(うー…馴染みの店に来るんじゃなかったかな)

なまじ外が見えるこの席。
仲良く手を繋ぐカップルを見るたびに、妙な恥ずかしさを感じてしまうから、きっとムズムズしたような顔をしているのだろう。

(あぁ…また、カップルだ…)

一体何組目なのか。
手荷物を片手に纏めた彼氏が、隣の人物を人の流れから守るように引き寄せて――

「あ」

吉継の口から、驚きの声が小さく漏れる。
それもそのはず、目の前にいたのはよく見知った人物達で。
勘良く気付いたのか、バタバタと近づいてくる青年に吉継は隠れたい思いで顔を伏せた。
その人物は数度窓を叩き、それでも吉継が無視を決め込むと、隣の人物と何かを話し、視界から消える。

「諦めてくれ…」
「吉継は〜ん」

なかった。

そして、吉継のとった行動は…。

「…吉継はん?文庫本じゃ隠れきらんよ?」

読みきった文庫本で必死に身を隠そうとしていた。

「……う〜。何で気付いてくれちゃうかな。行長は…」

行長は吉継の向かいの席に座ると、珈琲を注文する。
そして、顔を覗き込んだ。

「どないしたん?一人なん。珍しいやん」

クリスマスイブの日に。と言外に含む。

「うん…ちょっとね」
「正則が、何かやらかした?」

やらかすどころか、何もない。しかも、何かあるのは、これからだった。
吉継は、正則の名にビクリと肩を竦める。
顔が熱くなって、赤くなっているであろう顔を見られたくなくて、俯いた。

「何も…ないよ」

歯切れの悪い吉継に、行長は首を傾げる。

ちょうどその時、珈琲が運ばれてきて、行長は店員に小さく礼を述べ、カップを持ち上げた。

「何か、おかしいで?」
「そんな事、ない、よ」

どうしよう?この手の問題は…経験者である行長が適任だと思う。
でも、相談しにくい問題だ。
体験談として聞くと良いかもしれない。

「あのさ…聞きたい事があるんだけど…」
「ん〜なに〜?俺で力になれる?」

ニコニコと、身を乗り出してきた行長。

「清正と、初めてした時って、どうだった?」
「へ?」

行長は固まり、吉継は、やはり聞くんじゃなかった。と俯いた。

(あぁ…絶対に、呆れた顔してる)

カップを持ち上げたまま、ぴくりともしない行長の気配を探る。
この間を繋ぐ勇気が出ない自分に舌打ちしたくなり、吉継は発言の撤回をするべく口を開いた。

「ごめん、今のは…」
「えぇけど。聞いて、どないするん?」

(良いの!?)

行長の言動は、時にとても漢らしい。
聞いておきながら驚きを隠せない吉継に、「初めてって、いつやったかなー?」などと首を捻ってみせる。

(あまり、非常識じゃありませんように…)

大変失礼極まりない祈りを捧げながら、行長の口元に運ばれてゆくカップを見つめる。
自分が正則と住む前からなのだから、随分と長い付き合いだとは分かっているが――

「…うん、やっぱりアレや。酒飲んで勢いっちゅうか」
「お酒…?」
「アレも若かったし、酒飲んだ方が何かと都合良いかと思うて」

若いって、いつだよ。
いや、そうじゃなくて。

(…駄目だよ、正則、私より弱いよ)

「…そう」

多分、役に立たないであろう情報を仕入れてしまった吉継は、グッタリ項垂れる。

「んで、そないな事聞いて…もしかして、正則と、とうとう?」
「!!」

ウッカリ失念していた。
こんな事を尋ねるという事は、これから、そういう事が有ります。と言っているようなものだった。

それからの吉継の行動は、早かった。
素早く金を出すと、「お釣りはいらないから!」脱兎の如く、カフェから飛び出していった。

「お釣いらんって…吉継はん。太っ腹過ぎや」

吉継の伝票には、アールグレイとウバの紅茶が一つずつで、1260円。吉継が置いていった金額。10000円。

「やっぱ、そうなんかなぁ」

あの慌てっぷり。今日はクリスマスイブ。

「上手く行く事、祈っとこ」

行長は、隣の住人の顔を思い浮かべ、十字をきった。

「おい。吉継が血相変えて走って行ったが…何かあったのか?」

先程別れた清正が、両手に沢山の荷物を抱え、カフェに入ってくる。

「お疲れさん。何か飲む?」
「ああ、珈琲を…で、吉継は?」

普段落ち着きはらっている吉継の、あんな慌てた様子が気になって仕方がない清正は、行長に詰め寄った。

「ん〜ひ・み・つ☆まあ、明日辺りの正則を見てたらわかるで」

それまでのお楽しみや。



◇     ◇     ◇     ◇




あぁ。今頃行長は、清正と話しているのだろうか。
逃げてきた兎のように、吉継は背後を気にしながら部屋の前に立っていた。
いや、聞かなければ判らないことだらけなのだから、先達としての意見はとても大事だと思う。

(うぅ…だけど――)

「お酒じゃ意味無いよ〜」

飲んでツブれた正則を、介抱した事はあってもされた事は無い。
とは言え、縋るものは何にでも縋り付きたい今の心境。

「あ。でも、雰囲気作りって手もあるか…」

勝ち負けを考えてる段階で間違っていると気付いた吉継は、手にした袋にゆっくり視線を落とす。

「そうだよね…飲みすぎないようにすれば良いわけだし――」

それより何より、勃つものも勃たないと聞いている。

(って、何そこで納得しようとしてるの、自分は!)

ぶわっと熱くなる頬を押さえ、小さく足踏みする。
行長の意見に倣い、帰り道に買い足したワインやシャンパン。
早く部屋に戻りたいような、戻りたくないような微妙な気持ちに踏ん切りをつけるように、吉継はピンク色のカクテルの缶を手に取った。

「うー…絶対、明日顔合わせられない」

そして、それを一気に飲み干す。

「…これじゃ酔わないよね…」

無駄に酒に強い自分が、今は恨めしい。
でも、気は心!と自身に言い聞かせ、ドアフォンを押し、扉を開けた。
音を聞いて、正則がドタドタと玄関にやって来る。

「おかえり〜!」

ぽふっと抱き締められ、身構えてしまうのを、必死に押し止めた。

「た、ただいま…」
「晩飯の準備も万端じゃ!」

早く見せたいのか、そのまま引き摺って行こうとする正則を止める。

「ちょっと!まだ靴脱いでないから!」
「うお!?」

いつもと変わらない正則に、何だか落ち着いてきた。

(そうだよね。自然な流れが、一番だよね…)

「これ、買ってきたんだ」

ワインやシャンパンの入った袋を見せると、正則がそれを受け取り中を確かめる。

「お!吉継が選んだものなら、美味いの!…しかし、凄い数じゃの。重く無かったんか?」

何かとりあえず適当に買ってきたから、味は分からないし、慌ててた事もあって、ワイン、シャンパン、ビール、リキュール、スピリッツ、ブランデーに、焼酎や日本酒まで。
火事場の馬鹿力ってやつ?

「う、うん。色々飲みたかったからね」

笑顔で誤魔化した。

キッチンへ入ると、美味しそうな匂いが香っていて、正則が冷蔵庫から、可愛らしいクマとウサギの乗ったブッシュ・ド・ノエルを出してきた。

「クリスマスケーキはこれじゃ!」
「可愛いね…これ、全部正則の手作り?」
「おう!クマとウサギもワシの手作りじゃ!」

満面の笑みで答える正則に、久しぶりの自然の笑みが浮かぶ。

「よし!じゃあ、先ずはシャンパンで乾杯じゃ!」

メリークリスマス!と部屋中に響く正則の大きな声は、空を飛ぶサンタクロースにも聞こえそうな勢いだ。
思わず吹き出しそうになりながら、行儀が悪いと知りつつも、グラスをカチリと触れあわせる。

「うん、メリークリスマス」

喉を滑り落ちて行く繊細な気泡がいつもと違う夕食の始まりを伝えてきたが、緊張で食べれないなんて事があっては正則に申し訳がない。
スープを一口飲んで、ある事に気が付いた。

(今日、まともな食事初めてかも…)

朝は目玉焼きをつつき回してただけだし、昼は紅茶のみ。
今更ながら、お腹が空いてきた。
一口飲んで止まってしまった吉継に、正則が心配そうに問い掛ける。

「口に合わんか?」
「え?そんな事ないよ。凄く美味しい」

笑顔で答えると、正則も安心して笑顔になった。
それから、食事もまだ前半なのに、シャンパンを空けてしまう。
飲んだのはほぼ吉継。
ほろ酔いでも良い。酔わせてくれ。といった感じだったり。
そんなこんなで、ワインも空けてしまう。

「吉継…ペースが早いの」
「う、うん。今日は何だか飲みたい気分?」

小首を傾げて言うと、正則も「今日はクリスマスイブだしの」と納得して、ブランデーをグラスに注いでくれた。

(良かった。正則が単純で…)

食事も終盤に差し掛かった頃、吉継は気付いてしまう。
一般的に(?)食事が終わったら、プレゼント交換がある事を。

(また、緊張してきちゃった…)

ドキドキを抑えつつ、正則を見ると、ほろ酔い加減で上機嫌に、ケーキを出してきていた。
そして、とうとう切り出す。

「正則…クリスマスプレゼント。…お願い事って、なに?」
「!」

上目遣いで見上げた正則の肩が、ぴくりと弾む。
無意識なのか、微かに寝室へ向けられた視線に今から紡がれる台詞を感じ取って、吉継の鼓動が早くなる。

「…正則…?」

促すような、甘えたような自分の声。
自分を見つめる正則の瞳が、少しだけ真剣になものになる。

「吉継…あっちの部屋に、一緒に来てもらっても良いか?」
「――!」

もしかしたら、自分の心音が部屋中に響いているんじゃないか。と思える程高鳴り、少しでも落ち着ける様に小さく息をつき、頷いてみせた。
それを見た正則からも、安堵混じりの息が漏れる。
正則に付いて寝室へと、足を踏み入れ、間接照明が点けられた。

(この部屋、こんなに暗かったっけ?)

気持ちが変わると、周りの感じ方も変わるらしい。

「吉継…ワシは卑怯じゃ」
「え?」

正則の発言に、吉継は戸惑う。

「プレゼントと称して、吉継に願い事を叶えてもらおうと考えてしもうた…」

だから卑怯だと、振り返った正則には、後悔の念が浮かんでいた。

「…卑怯なんかじゃ、ないよ」

何度も迫られては、なんだかんだ理由をつけては拒んだ自分にも非がある。
ただ、恥ずかしくて、不安で、後ろ向きな事ばかり考えて、ずっと先延ばしにしてきた。

「正則の願い事。叶えてあげたい」

一歩、二歩と近づき、正則の胸にしがみつく。
はね上がった正則の鼓動が、自分の鼓動と重なる。

「吉継!」

暖かく、力強い腕が背に回された。
嬉しさの為か、ぎゅうぎゅうと抱き締める正則が、とても愛しい。けど、

「正則、…苦しいって…」
「うお!す、スマン…」

慌てて腕を解き、解放される。
何だか滑稽な自分達に、お互いの顔を見合せて、笑った。

「ふふっ」

幸せな気持ちだ。
心の中には、もうどこを探しても躊躇いは隠れていない。
だが。

「ねぇ、正則。私はあまり自信が無くて…だから、がっかりしないでね?」
「!!」

正則の中で美化されている自分に嫉妬するように、胸元で小さく唇を尖らせる。
きゅう、としがみつく指先に力を再び篭めれば、その仕種に触発された正則がくるりと向きを変え――

「が…っ、がっかりなぞ、せんぞっ!」

そう宣言して、なにやらタンスをごそごそし始めた。

「吉継じゃったら、絶対似合うはずじゃ!」

似合う?え?どういう事?
正則の言ってる事を何とか理解しようと、頭を働かせる。

(もしかしてコスプレ?)

初めてでそんな事を?
落ち着いてきていた気持ちが、再びざわめき始める。
吉継の戸惑いに気付く事無く、目的の物を探しだした正則が振り返った。

「じゃじゃ〜ん!コレじゃ!コレを着てくれ!」

目の前につきだされた物は、真っ赤なワンピース。縁には白いファーが…広告等で見た事がある。「サンタガール」の衣装そのものだった。

「…はい?」
「ワシの願い事は、コレを着てもらう事じゃ!」

いっそ晴れ晴れと語る正則に、吉継は呆気にとられた。

「コレを着る?」
「おう!広告で見ての。吉継が着たら、さぞ可愛えと思うての」

でも、普通に「着て」と言ったら、絶対断られると思ったから、願い事にした。
そう語る正則に、吉継は、ふつふつと怒りが込み上げて、

「正則の馬鹿!」

思いっきり突飛ばした。
突き飛ばされた正則は、一回転して、壁に激突。
マンションが揺れた…かもしれない。

(こんな事の為に、私は何日も悩んだの?)

それでも、正則が断れない状況で、吉継の想像していた事を願わなかった事が、少しだけ嬉しかった。






その後、一応約束だから。とサンタガールの衣装は着ました。
突き飛ばされ、打ち付けた鼻を、真っ赤にしている正則は、まさしく赤鼻のトナカイだ。


そして、何故怒ったのか。その理由を散々正則に聞かれたけれど、口が裂けても教えてあげない。








そんな恋人達のMerry Christmas☆










終わり☆



思わせぶりな感じで(笑)
そんなマサヨシが一つに結ばれるのは、まだまだ先のようです。

それでわ!Merry Christmas☆

20071223   佐々木健&司岐望