清正と行長の同棲までの道のり?

「上の階と下の階」(清正×行長)






「なんで開かへんね〜ん!」

鍵を差し、ドアノブをガチャガチャする青年が一人。

酒を飲んで来たのか、顔は相当赤い。

何故ドアが開かないのかというと、此処は203号室。表札には「加藤清正」とある。開けようとしている青年は小西行長、この部屋の真上、303号室の住人だ。酔っているせいで完全に間違えている。



暫くガチャガチャしていると、ドアが開いた。開いたドアにキョトンとする行長と、中からは不機嫌そうなこの部屋の住人、清正が出てくる。

「なんで清正が此処におんねん」
「此処は俺の部屋だ」
「へ?」

そこでやっと表札を見、行長は整った顔を歪ませ、

「マジで?」

明日が早い為、早めに寝ていた清正は溜め息をつく。

「これで何度目だ」

少し考え込んで、

「今月で2回目?」
「今月で4回目だ。まあ、良い。さったと入れ」

内約:酔っ払ってが2回。寝ぼけてが2回。



ちなみに、こんなやりとりをしているが、行長はろくに自室へ帰った事がなかったりする。8割同棲状態だった。なので、清正が合鍵を渡そうとするのだが、行長は、

「そんなん恋人みたいやんか!」

と受け取らない。

「では、俺達の関係はなんだ?」

と喧嘩に発展。



しかし、行長の恥ずかしがり屋な面から出ている言葉と知っている清正は、それらの喧嘩を逆手にとり、ベッドになだれ込ませていたりする。
清正は行長に「恋人」と認めさせる事ができるのか!?目下の目標です☆
認めない行長も、なんだかんだ言いつつ、鍵が掛っていなければ勝手に入っていくのだった。














そして数ヵ月後



今日も相変わらず清正の部屋に上がり込み、夕食を共にする。

その夕食、行長の食生活に不安を抱いた清正が、料理上手な正則に習い、作り上げた食事だったが、いささか本日の料理は豪勢だった。
一番目立つのは山盛りの鶏の唐揚げ。

「何や、えらい豪勢やねんけど。どないしたん?」

ネクタイを緩めつつ、料理を眺め、首を傾げる。

「…気付いてないのか?」
「ん?何を?」

何かあっただろうか?

「昨日あたり、不動産屋から手紙きてなかったか?」
「手紙?あ〜…まだ開けてへん」

届く郵便などダイレクトメールばかりで開ける気にもならない。

「今月中に片付けないと、面倒だぞ」
「だから、何をやねん」

意味が解らん。

「部屋。解約しておいたから、これはまぁ、同棲祝いだ。うん」

ご飯を茶碗に盛り、一人頷きながら席につく。

部屋。解約?

「はあ!?俺の部屋?」

うっかり茶碗を取り落としそうになり、慌てて持ち直す。

「全く使ってないんだ。お前の金だが、勿体無いだろ」

刺身用のわさびを出しつつ、行長を見やり、わさびを渡す。

「って、なんで勝手な」
「今までも散々言ったぞ」
「だけど!」

そりゃ、殆どこの部屋に居るけど、でもあまりにも勝手だ。

「一緒に住みたくないなら、取り消せは良い」

清正の真っ直ぐな視線から逃れるように俯く。

解ってる。素直になれない自分の為に、清正が進めたんだと。

「…」

行長は箸を伸ばし、唐揚げを掴み口に放り込む。そして、もぐもぐと噛み飲み込んだ。

「…しゃあないなぁ。寂しがり屋なお前と住んだるわ」









お前のせいにして、一緒に住んでやる。








終わり。

一応、同棲までの話になってますが、まだまだ先。



20061118   佐々木健&司岐望