しまった!今日ボジョレーヌーボー解禁日じゃん!!
と慌てて書いてみた。


「ボジョレーヌーボー解禁!」(正則×吉継)





11月の第3木曜日、ボジョレーヌーボー解禁。


学校も終わり、本日の晩御飯の食材を買いに来た正則の目に飛込んだものは、【本日ボジ ョレーヌーボー解禁!】のポスターだった。
正則自身、酒全般大好物で、特にワイン好きという訳ではないが、その年しか味わえないという物はやはり気になる。
それに、正則の同居人(正確には正則が居候)の吉継は割とワイン好きだ。
折角の解禁日、一本買って行くしかないと、ワインコーナーへ足を踏み入れた。

一口にボジョレーヌーボーと言えど、色んな物がある。
どれにしようか迷っていると、気の良さそうな店員が寄ってきた。

「何かお探しですか?」
「どれにしたらエエんか分からん」
分からないものは分からない。素直に聞くのが一番。
そんな正則に店員は微笑むと、一本のワインを手に取る。

「コレはヌーボーらしいフレッシュな味わいでオススメです」

店員の説明にウンウンと頷き、そこでふと閃いた。

吉継を酔わせて…。

正則は俄然ヤル気になる。
何を?とは聞かないでね☆実は正則、吉継と一緒に住む事には成功し、想いも告げ、吉継からも良い返事は貰えたものの、事に及んだ事は無かったりする。

正則がそんな事を考えてるとは知らずに、店員は更にもう一本のボトルを手に取る。

「此方はヌーボーでも、しっかりしたボディで華やかな香りがします」
「なるほど。じゃ、その二本貰うわ。それと、後何かオススメはあるんか?」

大抵一人の客が購入するワインは一本なのに、二本買うという。
更に聞いてくる正則に店員は気を良くし、ボジョレーから少し離れた棚から一本のワインを持ってきた。

「やはりボジョレーが有名ですけど、違う国のヌーボーもあるんですよ。此方はイタリアの白なんですが、繊細で柔らかな香りが評判なんです」

繊細で柔らか…吉継そのものじゃ…。

どこかに行きかける正則。戻ってこい。

3本のワインとワインに合うチーズを購入。晩御飯の食材も忘れずに。





今夜の計画に足取りも軽やかに正則は家路に着いた。

「ただいま〜」

ダイニングテーブルに荷物を乗せると、吉継が部屋から顔を出す。

「おかえり…凄い荷物だね」
「今日はボジョレーヌーボー解禁日じゃ!」

正則が3本のワインが入った袋を掲げると、吉継は、そういえばという顔をする。

「3本も買ってきたの?」
「おう!色々飲みたいしの」

袋から一本一本出して店員から聞いた説明をしていく。

「へぇ。何だか楽しみだね」

嬉しそうに笑う吉継に、正則も嬉しくなる。
それから、料理をするという正則に、

「何か手伝おうか?」

と申し出てきたので、今日の献立を説明し、冷製ものを吉継に任せる。二人でキッチンに立っているこの光景に正則は幸せだった。

「何か新婚さんみたいじゃの」
「ふふっ…何言ってるんだか」

楽しそうにサラダを盛り付ける吉継に、多少罪悪感を感じなくもないが、酔った勢いを借 りるだけで、無理矢理ではないのだ。

そんなこんなで、料理も出来上がり、グラスを用意して、席につく。

本日の献立。
サーモンマリネ。生ハムサラダ。鶏もも肉のコンフィ。メカジキのポワレ。パスタボロネーズそして、ワインに合わせて買ってきたフランスを中心としたチーズの盛り合わせ。
デザードがない位でちょっとしたコースメニューのようだった。

「どれから開ける?」

ソムリエナイフを手に吉継が尋ねる。

「全部。飲みきらんかったら、栓しときゃエエじゃろ」

予想通りの答えだったのか、吉継は笑みを返し、ワインのコルクにスクリューを刺した。

そして、楽しいお食事タイムだ。
吉継はまず、店員が最初に薦めたワインに口をつける。

「うん。凄く飲みやすい。香りも良いし」

満足そうに微笑む顔を見て、正則も同じワインに口をつけた。
あまりワインの良し悪しなど分からない正則だったが、店員が言った通り葡萄のフレッシュさが活きている美味しいワインだった。

「これだと、赤でも魚に合うね」
「そうじゃのぅ」

赤には肉料理ばかりだと思っていたが、これだったら、カルパッチョ等も合いそうだ。

3種類のワインを飲み比べてみて、正則が気に入ったのはイタリアの白だった。
繊細で柔らかな香りと味わい。店員が言った通りで、本当に吉継そのもののようで、飲んでるだけで幸せになる。

「ワシはコレが気に入った!」

白ワインが入ったグラスを持ち上げると、吉継が意外そうな顔をした。

「へぇ。何か意外。でも、本当どれも美味しい…私はコレかな」

深い赤のワインの入ったグラスを握り締める。
『しっかりとしたボディと華やかな香り』と言われたワインだ。

しっかりとしたボディ。
ワシ?
夢見がち正則。

「ワインも美味しいし、料理も最高。ありがと。正則」

柔らかく微笑む吉継に正則は有頂天になった。






美味しいワインに美味しい料理、合わせて買ったチーズと、優しい微笑み。いつもより時間を掛けて食事を進めた。














そして…



ピピ…ピピ…ピピピピピピ!



目覚ましが鳴り、正則は目を覚ます。

「なんじゃあ…もう朝か…」

布団を押し退け身を起こし、

「あれ?」

いつの間に布団に入って寝たのだろう?
そういえば目標も達成していないような…うまく働かない頭で昨日の事を思い出す。

ワインを飲んで食事をした。
吉継が「このチーズはどのワインとが良い?」と質問をし、ワインを飲み比べ答えるという事を繰り返した。 その辺りから記憶が無い。

「ワシ…飲み潰れた?」

正解。

「此処まで吉継が運んでくれたんか?」

それも正解。

「ワシってアホか…」

大正解。






その日1日魂が抜けたような正則が居ました。

ちなみに吉継は美味しいワインと料理に満足して、おやすみになられましたとさ。










終わり。


解禁日に気がついたのが16日0時
書き始めたのが2時半
半分まで書いた時にウッカリ全部消す。
書き終わったのが5時半。

そんな感じ。

20061116   佐々木健